医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

<   2016年 01月 ( 1 )   > この月の画像一覧

現在多くの認知症患者(Alzheimer型認知症(AD)以外にも広く使われている)に投与されている抗認知症薬の用量は論文の中で示されている治験データに基づいて決められたと考えればよいであろう。
驚くことに、治験を行った主任研究者は二人の精神科医に偏っている。その上、研究に当の抗認知症薬の製造・販売を行っている製薬会社の社員の名が挙がっている。わたしも前の職場で数種類の薬の治験に携わったが、最終の効果判定の会議に製薬会社の社員が同席していた記憶がない。まとめられた論文が数十年前のことで手元にないが、共同研究者として製薬会社の社員は入っていなかったと思う。
15,6年前の研究で現在ほど治験研究を歪める可能性がある研究者と製薬会社の、利益相反を生む可能性のある共同研究に対して厳しい目が向けられていなかったのであろう。それにしてもどこかで互いの利益を優先して、無意識に患者への効果を過大評価した可能性は否定できないと思う。
治験の際は製薬会社が手とり足とり、治験に携わる医師をもてなすのが慣例で、今思うといろいろ面倒を見てくれた製薬会社の好青年の顔を思い浮かべて、効果が疑わしかった症例に甘い評価を出したことが絶対ないかといわれれば、ありませんとは言い切れない。情けない。
これらの治験データに基づいて、医薬食品局審議管理課(薬事審議会の記録を提供してくださった製薬会社がある。厳密な審査の上に保険適用が認められたと伝えるためではなく、いかにいい加減な議論の下で認可されるかを伝えるために送って下さったと勝手に理解している)の審議を経て、現在一般的に使われている用量の抗認知症薬の健康保険での適応が認められた。
ただ現在この用量では副作用が多すぎると、健康保険で認められている用量よりはるかに少量で認知症治療をおこなうべきであると主張する実地医家が現れた。かれらが健康保険を使わずに自費診療を標榜して診療を行えば、第三者があーだこーだという筋合いはない。自分たちの思い込みかもしれない戦略の治療を健康保険でやりたいと言い張るので、わたしのようなへぼ医者も気付いたことを発言せざるを得ない。
しかし彼らの主張が必ずしも途方もないと断言できない、胡散臭さが治験データにはある。治験に携わった医療機関を尋ねると、非公開情報なので勘弁してほしいという返答だったり、効果を論文通りに判定してみたくて、効果判定に使われたSIB―JやCIBIC plus-J(文献7参照)の認知機能検査の詳細を尋ねると、著作権の問題で公開できなかったりと身も蓋もない返事が多い。効果が認知能力の推移の点数で示されているが、その点数をはじき出したADAS―JやSIB―Jの項目別(下位項目という。おいおいそのことについて説明する。簡単に言えばいろいろある認知機能別の評価)の点数の経時変化の詳細を問い合わせると、すべての製薬会社は非公開のデータで提供できないという(文献1から8すべて)。追試したくても追試できない検査で用量が決められている可能性があると感じた。当方が理解できないための誤解であればいいのだが。
まず用量設定された原著論文と、それに基づいて抗認知症薬の投与量が指示されている一般医家向けの総論を挙げておく。
詳細を論ずる前に抗認知薬の投与について3つの立場があることを紹介しておく。
1 製薬会社の指示する量で治療を行う(認知症専門医の見解)。
2 指示された量よりどちらかというと少量で治療を行う(コウノメソッド実践医)。
3 副作用があれば直ちに中止―副作用があるほどresponderだから様子を見ながら投与を続けよとよくテレビに出る鳥取大学の看護師教育が専門の浦上克哉先生はいっている。かれはresponderの定義を知らないー。副作用がなければ多人数のAD患者で得られた治験データに準じて治療を行う。ただ現在信じられているほど、有効投与量で臨床的にあるいは家人が満足できる効果が得られるAD患者は多くはない可能性が高い。典型的なADは意外に少ない。ADの診断と抗認知症薬の適応をもう少し厳密に見直すべきである(小生の立場)。
このようなことをもう一度真面目に議論しないと、認知症医療現場は荒廃したままであろう。わけのわからない勉強会が続けられるであろう。腑に落ちていないのにわかったつもりで、ボケ、即ADそして抗認知症薬の投与を続けるであろう。わざわざ医師がしなければならないことはない。そして周辺症状を増悪させる。認知症はこういう暴力行為や介護拒否をするのが特徴ですからと、不適切な医療行為を棚に上げて病気のせいにする。認知症に対する偏見はますます増大していくであろう。無用なことで患者を苦しめ続けるであろう。
糖尿病認知症という病気を作って、治療中の患者が鬱になったり、認知症になると、糖尿病は認知症をよく合併しますからと、多くの場合不適切な血糖コントロールが悪くて発症した病気を、糖尿病のせいにしているのと同じ。嗚呼!
高齢者の病気の少なからずは、過剰な投薬治療で起こっている。
これからは全く小生の想像である。93歳の御主人が93歳の連れ合いを老人ホームで殺したという事件、93歳で殺人を犯すほどの暴力行為にかられることは稀であろう。抗認知症薬の副作用による激越が招いた事件ではないか。高齢者が自動車で店に突っ込み人を撥ね殺す事件、アクセルとブレーキを踏み間違えてと報じられているが、降圧薬の飲み過ぎで過剰に血圧が下がり、脳虚血による失神発作が招いたのか、糖尿病の薬による低血糖発作によって意識レベルが下がって事故を引き起こしたのかのいづれかがありうるのではないか。10種類くらいの薬を服用している高齢者を日常的に診ていると、薬害による高齢者の事故がすくならずあるのではと疑わざるをえない。
原因が正しく究明されて、こちらの思い過ごしが明らかになれば、いつでもお詫びして訂正する。関係者からの報告を待っている。
文献
アリセプト
1 Homma A(本間昭)、エーザイ職員他:Donepezil treatment of patients with severe Alzheimer‘s disease in a Japanese population:Results from a 24-week、double-blind―placebo-controlled、randomized trial.  Dementia Geriatr
Cogn Disord 25:399,2008(東京都老人総合研究所、東京首都大学、東京医科大学、福島医科大学、筑波大学、Imazu赤十字病院ほか)
2 Homma A(本間昭)、Shigeta M、エーザイ職員他:Long-term safety and efficiency of donepezil in patients with severe Alzheimer‘s disease:Results from a 52-week、open label、multicenter、extension study in Japan. Dementia Geriatr Cogn Disord. 27:232、2009.(参加施設:東京都老人総合研究所、東京首都大学、東京医科大学、Imazu赤十字病院、福島医科大学、筑波大学)
3 Homma A(本間昭)他:Clinical efficiency and safety of donepezil on cognitive global functions in patients with Alzheimer‘s disease.  Dementia Geriatr Cogn Disord. 11:299、 2000.
4 アリセプトのすべて 朝田隆監修  エーザイ株式会社 2013
レミニール
5 本間昭、中村祐、ヤンセンファーマー研究者3名:ガランタミン臭化水素酸塩のアルツハイマー型認知症に対するプラセボ対照二重盲検比較試験.  老年精神医学雑誌  22:333、2011.老年精神医学雑誌  22:333,2011.
リバスタチン
6 Nakamura Y(中村祐), Homma A(本間昭), ノバルティス製薬社員、小野薬品社員:A 24-week、randomized、double-blind、placebo―controlled study to evaluate the efficiency、safety and tolerability of the Rivastigmine patch in Japanese patients with Alzheimer‘s disease.  Dementia Geriatr Cogn Disord. Extra 1:163,2011  
メマリー
7 中村祐、本間昭、北村伸、吉村功:新規NMDA受容体拮抗薬であるメマンチン塩酸塩の中程度から高度アルツハイマー型認知症に対する第Ⅲ相試験.  老年精神医学雑誌 22:464、2011.(74施設)
総論
8 認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012  医学書院
9 秋下雅弘他、老年学会:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン  日本老年学会・日本医療研究開発機構研究費・高齢者の薬物治療の安全性に関する研究班。 2015年 メジカルビュー社
10 和田健二、中島健二: アルツハイマー型認知症の診断と治療  医学と薬学 72:1153-1162、2015
(「認知症に寄り添う 地域ネットワーク作くりへの課題と今後の展望」という日本医師会主催の講演会に出た後これを書くつもりであった。開催日時を間違え欠席した。事務局に資料を請求したが、出せないという。5月14日同じような会議が滋賀で行われる。その出席票を手に入れた。日本医師会が全国で行っている会であり、滋賀の会には出席して、追加すべきことがあればこのBLOGにのせる)。


by rr4546 | 2016-01-29 10:29 | 医療関係 | Comments(1)