医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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10月9日付けの朝日新聞に「認知症薬の副作用を出にくくするため、規定より少ない量を処方できるようにしてほしいと、『抗認知症薬の適量処方を実現する会』を立ち上げた」との面妖な記事が載っていた。兵庫県で認知症患者を診療する長尾和宏代表理事が10月8日、東京都内で設立を発表したとのこと。
どのような医師が集まり、どのような規模であるかについては、全く触れられていないので、会がどのような影響力を持つ会なのか、部外者の私には見当もつかない。
ただ最近がん治療や認知症治療について積極的に発言している長尾博士が、忙しい診療の合間を縫ってわざわざ東京まで出かけて主催した会である。その上、認知症について熱心に取り上げる朝日新聞が、会の開催を報道した。わたしたちが身内で集まって勉強会を開く規模ではなく、意見を同じくする医師がそれなりの数が集って、大げさに言えば「認知症薬の少量投与」を保険診療で認めよとの圧力団体にすぐにでも様変わりする規模であったのではないか推測している。何も情報がないのですべて当てずっぽの印象である。
医師も計算高く、自分の収入に拘わらない会に出るほど、患者思いの高邁な志しを持つ暇人は多くはいない。
現在保険診療上認められている4種類の認知症薬の有効投与量は、発売前に権威のある認知症専門医たちが大掛かりな臨床研究で厳格に決めたものである。それを示すデータも詳しく公開されている。
認知症薬が臨床で使われるようになってから、最初の薬は10年以上広く使われている。他の3種類も発売後4年は経過している。現在でもマスコミなどに認知症薬の治療で、7年間若年性アルツハイマー型認知症患者を悪化させないで診ていると自慢する医師と当の患者が登場する。
それにもかかわらず、今になって今までの投与量は副作用が強いので、少量投与にせよ。一体どういうことだ。効果が少ないので、もっと高用量を使用できるようにという話ではない。効果がなかったら、投与量を増やせと記載されている薬の添付文書はよく見る。少量にせよなどうたうわけがないではないか。
現在認知症治療―認知症薬はすべてAlzheimer型(AD)認知症のみに限るとされているが、しっかりした鑑別診断をしないで、ボケていればすべてADとされているーを受けている人は今処方されている量を飲むべきか、少量を飲むべきかさぞ困惑されていることであろう。
認知症薬の添付資料から現在処方されている用法・用量に関する説明文を抜粋する。
アリセプト(アセチルコリン分解酵素阻害薬、脳中のアセチルコリンを増やす薬):
通常、成人にはアリセプト(ドネペジル塩酸塩)として1日1回3mgから開始し、1~2週後に5mgに増量し、経口投与する。高度(重度?)のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
使用上の注意
1.3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を押さえる目的なので、原則として1~2週間を超えて使用しない。
後略
メマリー(NMDA受容体拮抗薬):
通常、成人にはメマリー(メマンチン塩酸塩)として1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持料として1日1回20mgを投与する。
使用上の注意
1日1回5mgからの漸増投与は、副作用の発現を押さえる目的であるので、維持量まで増量すること。
他にアセチルコリンを増やす認知症薬として、レミニールとリバスタッチがある。
レミニール(ガランタミン):
1日8mg(4mgを1日2回)から開始し、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回)に増量し、経口投与する。なお、症状に応じて1日24mg(1回12mgを1日2回)まで増量できるが、増量する場合は変更前の用量で4週間以上投与した後に増量する。
使用上の注意
1.1日8mg投与は有効用量ではなく、消化器系副作用を抑える目的なので、原則として4週間を超えて使用しないこと。
リバスタッチ(リバスチグミン)
通常、成人にはリバスタッチとして1日4.5mgから開始して、原則として4週ごとに4.5mgずつ増量し、維持料として1日1回18mgを貼付する。
使用上の注意
1日18mg未満は有効用量ではなく、維持料である18mgまで増量すること。
すべて添付文書はネットで公開されているので、興味ある方は直接見られると良い。
どの認知症薬も有効用量が詳細に指示されている。増量は認めるが、少量は有効用量でないと結論つけている。この用量設定を信頼して認知症薬を処方するしかないではないか。まさか医療関係者が杭打ちのデータ改ざんまがいのことをするわけがない。
なおこの原稿を書く前に、4社の製薬会社に少量投与の有効性について直接問い合わせたところ、すべての会社が少量投与では効果がないという返事であった。
しかし少量投与を認めよとの会が、医師主導で開催された。薬の売り上げ高からみれば、驚くべき多くの患者が服用している薬の用法が、今になって話題になる。わたしのBLOGを読んでくださっている人はその背景を理解してくださると思うが・・・・・。読んでくださっている方は少ないので、何とも言えない。残念!
少量投与を認めよ、ばりばりの認知症専門医の出した結論に異議を唱える。専門医の実施した臨床研究の信頼を大きく損なう事件だと思う。そのうえ何を根拠にしているのであろうか、少量投与を進める会が恥も外聞もなく、これまた実地医家主導でもたれる。現在の認知症医療現場の荒廃がもたらした茶番劇である。
この会に同業者が集まった背景があるに違いない。
認知症は治せると公言して、堂々と自分の治療方針を「コウノメソッド」として多くの著書だけでなく、BLOGでも詳細に公開している河野和彦博士の影響があると、わたしは睨んでいる。コウノメソッドで検索すれば、詳細に治療方針を見ることができる。
河野和彦博士は認知症医療に余人に代えがたい情熱で取り組んでおられる。耳を傾ける点がないわけではない。鑑別診断も真面目に、いや正確にしない、その上治療薬の効果も副作用もろくに見ないで認知症診療を続けている高名な認知症専門医よりはるかに良心的である。
しかし「少量投与」を保険診療で認めよなどという不思議な会が立ち上げられた背景として河野和彦博士の果たす役割に触れないわけにいかない。氏は認知症薬の効果は用量依存性ではなく、過量になると効果が薄れる釣鐘型曲線を示すと指摘して、どちらかというと少量投与を勧めている。そのために健康保険制度の根幹を揺るがすような、保険請求の誤魔化しのテクニックも披露している。また認知症薬をただ単に認知症の神経症状を軽減する薬と考えないで、神経細胞の死滅を防ぐ効果があると思い込んで治療に取り組んでいるフシがある。さらにAlzheimer と機序が異なって発症する前頭側頭葉認知症等も同じ治療戦略で臨み臨床効果があると独断的に断じて、どこにも記載されていない治療方針を提案している。これからおいおい書いていく。講演に全国を飛び回っておられる。
多くの実地医家がコウノメソッド実践医として、認知症診療に当たっているらしい。今回の適量投与の会を立ち上げた長尾和弘博士も、コウノメソッドのバリバリの実践医である。コウノメソッドを紹介しながら、認知症薬の少量投与が提案された背景を考えてみたい。驚くべき結論が導かれると思う。
誰かが「高齢者医療の現状と問題点」を書かなければ、高齢者は医療の食い物になって悲惨な余生を送ることを余儀なくされる。これを放置しておくと将来に禍根を残す。嗚呼!
続く

by rr4546 | 2015-10-30 13:40 | 医療関係 | Comments(1)