医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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高血圧、糖尿病そして認知症は高齢者疾患の代表的なものであろう。講演会で糖尿病患者の90%以上が60歳以上であるとの話を聞いたことがある。高血圧も事情は同じであろう。認知症に至っては、最近「私は若年性認知症」ですとカミングアウトする40歳代の患者?がマスコミなどに登場するが、実際のところは99%が60歳以上の高齢者に発症していると考えてよいであろう。
ただ、高齢者疾患といっていい癌や重篤な血管イベント患者を除いて、高血圧、糖尿病、認知症は、特別な場合を除き、入院して病状の詳細が調べられたり、治療方針が立てられたりすることはない。糖尿病の教育入院を除いてではあるが。
とくに軽度の認知症患者に間違っても入院との処方箋が切られることはない。入院の必要がないのは幸いであるが、重度になるまで外来でfollowされるために、患者に多くの不利益を生んでいる。
認知症、とくにAlzheimer認知症(AD)は脳の機能の障害からくる体験記憶障害、場所や時間の見当識障害、失認、失行、判断力の低下、実行遂行機能障害などが見られるが、これらの中核症状は確実に進行していく。3か月の一度の診察でも増悪したなとの印象を持つことがある。AD患者は抗認知症薬が治療に必要な投与量に達すれば、ほとんどの場合3か月に一度、時には患者不在のまま家族に病状を尋ねて、同じ薬が投与されている。2週間に一度や1ヵ月に一度の診察をしても患者に有用な情報が得られないからである。
ただ厄介なことに病状の進行とともに、周辺症状と呼ばれる徘徊、不潔行為、介護拒否などの行動異常と、不穏、妄想、幻覚などの精神症状などの周辺症状と呼ばれる症状が出現してくる場合がある。認知症で一番家族を困らせる症状である。認知症にはなりたくないと思わせる症状である。
周辺症状は中核症状と違って、環境変化や体調や介護の仕方で出たりでなかったりする。外来で診察をしていて、家族が訴える周辺症状を観察できることは稀である。外来で認知症患者をfollowする際、患者の容態のごく一部しか見ていないという事実を軽視して、安易に薬物治療が行われているが、このような現状をわたしは認知症医療の荒廃と呼んでいる。
余談であるが、周辺症状と呼ばれる多くの症状は、患者の自尊心―ボケた人にも誇りがある。傷つけるような言動は厳に慎まなければならないーにきめ細かく配慮した対応を心掛け、便秘とか尿閉などの身体的不調を注意深く観察して処置すれば大抵消失する。
ただ徘徊だけは、場所の見当識が障害されていることを自覚できない患者が、想定外の動機で外出し、迷子になる周辺症状で、患者の目的が理解できない第三者には防ぐ方法がない。
「あなたは場所の見当識が障害されているので、一人で出歩かないように」と患者に説明しても止めようがない。あなたは場所がわからない脳の病気にかかっていると言うだけでも、患者の誇りを傷つけるとの自覚がわれわれには求められている。
認知症患者とコミュニケーションをとるコツの一つは、低下した認知機能に関する会話を巧みに避けながらたわいのない話題のもとで問診をすることである。
徘徊を防ぐためには監禁する以外方法はない。ただ拘束は認知症患者に絶対にやってはならない。症状を増悪させるだけである。
一人で出かけて徘徊することがあることを前提にして、身分が確認できる名札か、GPS機能付きの携帯を身につけさせて、対応するしかない。そしてみんなで何を目的にして出かけるかを考え、その動機に対する適切な対応が求められる。動機のない徘徊はない。
先日、NMDA受容体阻害薬(メマリー)がADの認知障害の改善と進行遅延に関する講演を聞いた(「高齢者のトータルケアを目指して」、11月29日)。今でもこのような講演会に結構な数のドクターが集まる。
3年前の発売当時は、従来の抗認知症薬とは異なる作用機序で、中程度と重度のADの進行抑制に効果があるとの講演会がたびたび催された。2012年には発売一周年を記念して、今回講演された先生をはじめ、わが国の認知症臨床をリードしているそうそうたる権威が「メマリー認知症シンポジウム」と銘打たれた会で、メマリーの有用性を熱心に語られ、そのダイジェストがメマリーの販売資料として広く一般医家に配布されている。わたしの手元にもある。2年前の話である。その企業努力のせいであろう、認知症(ADでない認知症を含めて)を診ている臨床医のほとんどがメマリーを処方しているのではないだろうか。
ただ製薬会社が腹積もりしているほど売り上げが上がっていないのだろうか、今でも今回のような、メマリー投与によって介護負担が軽減した、自分の名前が言えるようになった、夜間トイレに一人で行けるようになったなどなど、メマリーの有用性を語る講演会が認知症対策に熱心に取り組んでいる地区医師会の音頭で行われる。
メマリーの効果が実感できないわたしは、彼女のメマリーの有用性についての講演を聞きながら、抗認知症薬の効果を実感できるのは、漢方医が漢方薬の効果を確信している思い込みと実によく似ていると感じていた。
薬がよく効いたという講演会の際に、いろいろ足を引っ張るような質問をすると場が白けるので、質問は控えるようにしているが、今回は2,3質問してみた。
死滅した神経細胞に効いているのではなくて―死んだ細胞に効く薬はないー、健常な脳細胞への不要な刺激を効果だと勘違いしているように思えたので。
続く

by rr4546 | 2014-12-18 20:44 | 医療関係 | Comments(1)