医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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厚労省の研究班は2012年現在65歳以上の高齢者3079万人のうち、認知症は462万人、軽度認知障害(MCI)は400万人いると報告した。認知症のうち60%がAlzheimer型認知症(AD)と推計されているので、おおよそ270万人近くのAD患者がいることになる。ともあれ高齢者の3人に約1人弱が認知機能に障害がある。
認知症の権威たちが出した数字であり、認知症に携わる実地医家はこのビッグな数の患者とどう向き合っていくべきか襟を正さなくてはならないであろう。マスコミもこの驚くべき数字に悪乗りして、医療関係者でもないのに認知症の啓もう活動や認知症の自己判定などのセンショーナルな特集を組んで張り切っている。彼らは認知症患者に本当に接したことがあるのか心配である。
ありもしない早期診断・早期治療の重要性を囃し立てている。早期診断をして治療の成果が上がった症例をどれほど確認しているのだろうか。
認知症ノイローゼ患者を生み出したり、過剰診断(誤診)による不必要な投薬治療が行われたりすることがこれまで以上に広がるであろう。
認知症ではないかと自己診断して受診してきた患者に「心配ありません」とはっきり言える実地医家はいない。早期治療と叫ばれているので、早期治療がうまくいくのだろうと、臨床経験もないのに転ばぬ先の杖と抗認知症薬を処方するのが医師の習い性である。
私の診断基準では歳相応の認知機能障害で、言ってみれば正常な90歳の方でも、息子さんが「母はボケています、抗認知症薬を絶対投与してください」といって譲らない。副作用が出て止めましょうとお話ししてもダメ。嗚呼。
誰がこのような状況を生み出したのか。
マスコミの振舞いを見ていると、認知症を本当に憂いて仕事に取り組んでいるというより、誰かに耳打ちされたテーマに自分の仕事を作ってもらったと無責任に時間つぶしをしているようにしか見えない。虚しい。
認知症患者を診る機会の多いわたしでも、認知症とはこういうものだとイメージを持つことができたのは、4,5年たってからである。
製薬会社は自分たちの薬の売り上げが頭打ちになったり、低下したりするとなりふり構わずあらゆる手段を講ずることが最近の製薬会社が引き起こした不祥事からわかるではないか。新薬の発売に際しても一緒。糖尿病治療薬であるインクレチン関連薬は現在糖尿病患者の7割以上が服用している。マスコミが無責任に煽ったおかげで、新薬・新薬と実地医家に患者が押し寄せた。高価な新薬の服用で糖尿病性関連死や糖尿病合併症が減少しなかったことが最近の臨床研究で明らかにされた。私の印象では低血糖による認知障害糖尿病患者が増えた。片棒を担いだ医師やマスコミの罪はいずれ問われるであろう。
バイオマーカー、遺伝子診断そして脳の画像診断を使っても、データを改ざん-学内調査で悪意のある改ざんとは言えないが不適切な修正があった。どういう意味であろうか。悪意があるとしか私には思えないーをしなければ期待するようなすっきりしたADの診断基準が出来上がらないというのが、国主導のJ-ADNIの現時点での結論。
分子レベルの病変が生じてから臨床症状が出るまで、患者毎の脳の可塑性(脳の対応能力)が違い過ぎて早期の場合は一定の傾向を出せないように思う。脳の委縮があっても、一線でバリバリ活躍している人もいれば、ボケてしまっている人もいる。
機会があれば、脳の病理学的変化と臨床症状は末期ならともかくも、早期ではほとんど一致しないことについて論じてみたい。
脳といっても、一線のマスコミで働ける人と、しがないBLOGしか書けない人がいるのと一緒。足があってもネイマールのように巧みにボールが蹴れる人と私のように小石に躓いて転ぶ人がいるのと一緒。
認知症の最前線で認知症診断に取り組んでいる医師たちも、最新の診断技術を生かすためにも、臨床的な診断を厳格にすることが認知症診断の第一歩だと指摘している。
ただどの世界にも名医がいて「わたしなら早期に診断します」と威張る人がいるから厄介である。
臨床的に診断をするときに、どの臨床診断基準にも触れられていないが、「病識の欠如」と「取り繕い」という、わたしがADに特徴的な症状だと考えていることについて日頃感じていることを書いておきたい。
ADの臨床診断基準についてはNo6で紹介した。念のためにこれからの議論のために重要なところを一部再掲する。
DSM-Ⅳによる診断基準
A.以下の両方により明らかにされる多彩な認知障害の発現
(1)記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起したりする能力の障害)
(2)以下の認知障害の一つ以上                                                          
a)失語、 b) 失行、 c) 失認、 d) 遂行機能障害(計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化することの障害)
B.基準A(1)およびA(2)の認知障害はその各々が社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示す
C.経過は穏やかな発症と持続的な認知機能の低下により特徴づけられる

by rr4546 | 2014-06-26 12:41 | 医療関係 | Comments(0)
早期診断のために最も期待されているのがAlzheimer(AD)発症の引き金となると考えられているアミロイドβの脳への蓄積を検出することである。
J-ADNIでも脳脊髄液中のアミロイドβ量の低下の測定と、アミロイドPET検査が早期診断の重要なツールとして採用されている。
アミロイドβが少々蓄積しても、当初それを示す精神・神経症状は見られない。アミロイドβ仮説によると、アミロイドβが蓄積し始めてから10年から20年たってAD型認知症を発症すると推測されていることは繰り返し紹介している。そこで脳へのアミロイドの蓄積を早期に診断する方法として、脳脊髄液中のアミロイドβ量と脳へのアミロイド蓄積を可視化するアミロイドPETが使われるようになった。
アミロイドPETはアミロイドβタンパクに結合するポジトロン標識の放射性薬剤を用いて脳へのアミロイドの蓄積を検出する方法である。被験者の不利益の一つとしてあげられる放射線の被曝を伴う検査である。
私のような脳の画像診断の門外漢は、アミロイドPETが早期診断の最も信頼できる方法であろうと思い込んでいた。聞きかじりで問題点については触れてきたが。
最近日本医師会雑誌に加藤隆司・伊藤健吾が「認知症におけるアミロイドPET」という総説論文を載せられた(日医雑誌 143:354-355,2014)。
アミロイドPETを臨床的に使用する際に知っておくべきことを2点あげられた。
1 認知症患者のアミロイドPETが陽性であることでADと確定することができない。認知機能正常者や他の神経学的疾患の患者においてもアミロイド病理が存在することがあり、直ちに認知症の原因と結びつけることはできない。(以前、20%くらいの健常者にアミロイド沈着が認められるとの成績を紹介した)
2 アミロイドPETが陰性である場合はADをおおむね除外診断できる。ただバイオマーカーと一致しない場合は判定保留となる。
アミロイドPETが利用可能となったとしてもADの診断はあくまで認知障害の臨床的診断基準に従って行うことの重要性を強調された。私の臨床経験でも納得できる総説論文であった。
画像、遺伝子そしてバイオマーカーは証拠が残るので、データを書き換えるのは行われなかったのであろう。いや行われているのかもしれない。
聞くところによると、ADに特徴的な短期記憶のテスト結果を改ざんして、「記憶障害に問題あり」あるいは「記憶障害以外に障害あり」をかなりの症例で書き換えていたらしい。当事者が何をしたか明らかにしないのでこれらは推測の域を出ない。ただ一番重要なデータを書き換えていたとすれば、犯罪に近い行為であろう。
ADの診断で一番重要な臨床的心理テストでデータの改ざんがあったとすればJ-ADNI研究の成果の信頼が著しく損なわれる。
ADの基礎研究の権威も、「豊富な知識と経験を活かし・・・・」と認知症臨床に精通している製薬会社から派遣された事務局長もADの診断のための臨床的診断基準の重要性についてよく理解していなかったのであろうか。あまりにもやり方が杜撰である。患者のためというよりは、何か別の意図が働いたと勘ぐりたくもなる。
最近血圧、コレステロールなどの正常値を変えると、高血圧患者や脂質異常患者が急増するなどのセンセーショナルな記事が週刊誌などで踊っている。
6月7日号週刊現代に「新薬が出ると、その病気の患者が急増する  高血圧は1.5倍 糖尿病は2倍  高脂血症はなんと5倍」という見出しにも興味を持った。買うのも気が引ける表紙で内容については詳らかではない。今の医療現場を見ているといずれもありそうなことである。
ただ今回のJ-ADNI研究がADの診断基準を曖昧にして、ますますADの医療現場を荒廃させたり、効果もない認知症根治薬がADの発症予防薬として売り出されたりする根拠にされないよう祈るばかりである。
何を一人で憂いていると眉をひそめられる方もおられるであろう。
認知症対策のための地域連絡協議会や認知症家族の会への関わり、そして認知症のマスコミ対策などの製薬会社のやりたい放題を見ていると、一言で杞憂とは片づけられない気がする。
6月12日から日本老年学会が福岡で開催される。私も会員で先日抄録集が送られてきた。一線の認知症現場で頑張っておられる実地医家の認知症は組み安しという講演が数多く計画されている。認知症専門医として生業を立てていて、認知症医療はほとんどなにもすることがありませ。効果も目覚ましいものではありませんと言ってしまっては身も蓋もない。自分が熱心に取り組んでいると、客観的に有効だと評価されなくても、うまくいっていると悪意なく思い込んでしまうのが医者のサガである。ただこんなに楽天的でいいのだろうかと思わざるを得ない。認知症患者は徘徊するだけではない。
勿論メマリーの効果の有無や、J-ADNI研究の改ざん問題や基礎研究への利益相反に当たる可能性が高い製薬会社―エーザイはアミロイドβの産生を阻害するAD根治薬を開発したと会社案内で紹介しているーの関与についての話し合いがどこで行われるか抄録集から読み取ることができない。
患者を丁寧に診ない認知症医療がどんどんと広がって、認知症医療をよくするために何をすべきかの空想話が続けられていくであろう。
目の前の課題を誠実に一つ一つ解決していくのが認知症対策の第一歩である。

by rr4546 | 2014-06-05 23:07 | 医療関係 | Comments(0)