医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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最近の臨床研究によると、わが国の認知症患者の70%はAlzheimer型認知症であるとされる。
アルツハイマー発症の正確なメカニズムは現在でも不明である。当初、アセチルコリン欠乏説―この仮説に従って脳の中のアセチルコリンを増加させる3種類の抗認知症薬が開発されたーが提唱された。しかし現在この仮説を信じる者はいない。
現在考えられている機序は、脳にアミロイドβが蓄積して脳細胞中に老人班を出現させて、引き続きタウ蛋白リン酸化が神経原線維変化を引き起こし、認知障害を発症させるというアミロイドβ仮説である。この脳での変化は認知症発症の数十年前から起こっていることがわかっている。その変化をより早くとらえる試みが、アルツハイマーの早期診断である。
念のために言っておくが、マスコミなどが認知症という言葉を軽々に使っているが、認知症という病気は、仕事、社会活動、人間関係の障害がみられる認知障害を呈する場合に限られるということに触れておく。
記憶障害、思考力の低下、判断力の障害、失語、失認そして失行があっても、社会的あるいは家庭生活でさほどトラブルがなければ、病気、認知症とは呼ばない。私のような年齢になればこれらの中の一つや二つの症状はあるが、認知症という病名はつけられないでかろうじて日常生活を送っている。勿論買い物も一人でしている。
公共放送のニュース番組(1月23日午後9時ーNHKの看板番組であろう)で、認知症患者が買い物に出かけてお釣りまでもらって安心して帰れる仕組みつくりをしているベルギーのある町が紹介されていた。この患者を認知症と診断しているとすれば、認知症患者を診る機会の多い私は違和感を抱かざるを得ない。正確に目的の店を見つけて買い物をする。その上正しく釣銭をカウントできて家に帰る。もし釣銭が間違っていたり、釣銭がなくなったりのときは、だれが責任を取るのであろうか。あるいは、家路を間違えて徘徊など始めたら一体どうなるのであろうか。
町全体で認知症患者を支える仕組みが出来上がっているので、せこい心配などしないで安心してくらせるのであろう。
認知症患者を抱えるわが国の家族は、認知症患者も一人で買い物ができるようになると錯覚して、認知症治療をもっともっとと主治医に駄々をこねることであろう。
認知症治療の権威も、昨秋の松本での日本認知症学会のランチョンセミナーで、現在使われている抗認知症薬4種類の満足度や効果は、他の薬に比べても格段に低く、最低ランクであることを図で示し、認知症治療薬のさらなる開発を促す旨の講演をされた。そういう事情をご存じのない一般の方はテレビを見て認知症になっても、買い物くらいはできるようになると、ありもしない妄想を抱いて医療機関を訪ね歩くことになるであろう。
テレビに映った高齢者は認知症という病気ではなくて、軽度認知障害(MCI)の状態であると私は思う。正しく伝えるべきだと思う。認知症という病気とMCIは違うのである。
NHKで火曜日の夜10時に、角田光代原作の「紙の月」という誠に興味深いドラマが放映されている。その中で、富士真奈美が、典型的な認知症と診断していい「名護たま江」というお金持ちの独居老人を演じている。娘が自分のお金を狙っているという物とられ妄想に取りつかれ、お金を冷蔵庫に入れてなくなったと言い、整理整頓のできていない部屋でだらしなく生活をしている。そのくせ他人である銀行員に偽の定期預金証で多額のお金をだまし取られる。わが国でも実際にこのようなことはおこっている。作家の想像力のほうが、真実を言い当てている。
認知症の人をより深く理解するためにも、買い物をする認知症患者より、名護たま江のほうを知っておくほうが、はるかに有益であろう。
ドラマのほうが実際に即しているのに、客観的に伝える使命を持つニュース番組が、極めてまれな現状、あるいは認知症とMCIを区別しないで報道する。一体どうしたことか。何かおかしい。
正しい認知症対策をわが国に作り上げるためにも、認知症患者の本当の苦しみを伝えるべきであろう。きれいごとでは本当の対策は立てられない。
J-ADNIの有用性について論ずる前に、触れなければならないことばかりで、なかなか本題にたどり着けない。

by rr4546 | 2014-01-30 17:04 | 医療関係 | Comments(0)
「医学的根拠は何か」(津田敏秀/岩波新書)に、医学的成果を科学的な根拠(数量化)に基づかないで判断すると、とんでもない過ちを犯すことがよく書いてある。
数量化を無視して、個人的な経験を重んじ(直観派)たり、生物学的研究の結果を重視(メカニズム派)したりして出す結論は信用できない。直観派やメカニズム派はわが国の医学的成果の解釈を歪めて、誤った行政施策に寄与したり、私たちの常識を誤らせたりするという。全く同感である。
大部分の医師たちは直観派であったり、メカニズム派であったりで、日本では「医学的根拠」という言葉はないに等しいというのが、津田博士の告発である。
君は自分の狭い経験(直観)で、認知症の診断・治療について語っているのではないかと怒っておられる方も多いであろう。多くの権威が議論を重ねて診断基準を作り上げ、抗認知症薬の一過性の認知障害改善効果や障害の進行抑制は多施設で確認されている。今更なにをごたごたと言っているのだと。
私の本来の専門分野である血液学領域で急性白血病(以下AML)の化学療法としてDCMPという4種類の抗がん剤の併用療法が、最も寛解率が高く生存期間が長いと考えられていた。ただ白血病治療で評価が高い病院の血液腫瘍学者であるK先生は、DCMPにビンクリスチンという抗がん剤を加えると従来の治療より一層効果があると譲らなかった。しばらくはビンクリスチンを加えるのがよいのか、ビンクリスチンなしで治療するのがよいのかは棚上げになっていた。
白血病治療に携わる腫瘍専門医たちはK先生の主張に医学的根拠があるかどうかを、多施設でしかも統計学的有意差の出せる症例数を使って、ビンクリスチンを加える群と、加えない群を無作為に割り振って比較したところ、K先生の主張とは違って、ビンクリスチンを加える群のほうが寛解率は悪かったという結論が得られた。そういう事件?を知っているので、自分の狭い経験(直観)で医学的事象について軽々に発言してはならないことは肝に銘じている。稀な例でうまくいったうまくいったと言わないよう自分を律している。
しかしアルツハイマー型認知症の早期診断や治療について、認知症の専門家や厚労省の見解について納得できないことが多すぎる。本当に彼らは認知症患者を丁寧に診ているのだろうかと。直観を磨いて患者を診療しているのだろうか。
前回取り上げた認知症の早期診断のための「自分でチェック」シートも、加齢で見られる症状と余りにかぶり過ぎている。専門医が見たら加齢現象かどうかは判定できる。本当か? もの忘れのある高齢患者は私の経験では、すべてアルツハイマーに適応がある抗認知症薬を服用している。
これだけ認知症だけにはなりたくないと多くの人が怖れているのに、さらに認知症ノイローゼを増加させるような設問を患者にばらまいて何をしようとしているのだと疑問を呈しているのである。
アルツハイマーにせよ加齢にせよ、認知障害があっても、自覚症状がないのが普通である。典型的なアルツハイマー型認知症患者にあなたは認知症ですと言えば、大変な剣幕で抗議を受ける。80歳を超えているので、ついオバーさんと呼びかけるだけで、大変ご機嫌斜めになられる。
専門医の間では認知症を告知するべきだとの意見が大勢。私の知らない治療現場では告知をしながら、より良い医療が行われているのであろう。
ここまでは認知症を早期診断のための「自分でチェック」の表に対する異議申し立てである。

ここからは果たしてアルツハイマーが本当に抗認知症薬の効果が判定できるほど、臨床現場で正しく診断されているかという疑問についてである。
アルツハイマーの診断や治療効果を統計学的に処理できるほど、アルツハイマーの疾患が正しく理解されているのか?
データ書き換えがあったJ-ADNI研究のような直観やメカニズム派を排した、認知症の早期診断の数量化による国家プロジェクトが本当に患者に福音をもたらすかの議論である。
神経変性疾患はいくら知識が豊富であっても、誤診したまま診療を続けることはよくある。高血圧や糖尿病とは違うのである。
最近進行性核上性麻痺と診断した患者がいる。長い間、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症の診断のもとで、抗パーキンソン薬や抗認知症薬の投与を受けていた。この疾患は転びやすさ、構音障害、嚥下障害、眼球運動障害、認知症など多彩な症状があり、私もお話をする時に、認知症と鑑別するべき疾患として必ず挙げていた。
ただ今回の症例に遭遇するまで、認知症患者を診るときに頭によぎったことがなかった。ただ体の硬直が極端で、アルツハイマー型認知症に時に見られる運動障害とどこか違う印象で、しばらく可笑しいなと心に引っ掛かっていた。確定診断がつけられなくて、抗パーキンソン薬と抗認知症薬の2剤併用を続けていた。
しかしいつも下を見ようと眼球を下方に無理やり向けている。これが眼球運動障害かと思い当り、進行性核上性麻痺という疾患にたどり着いた。もう一度教科書で復習してみると、発病時期、経過そして現在の病状すべてが進行性核上性麻痺に適合するではないか。神経疾患はどの教科書より、その疾患を経験することである。症例に出会ったおかげでこれから二度と見落とすことはない。
神経変性疾患は稀なものが多く、いくら知識があっても診断できない場合が多い。直観を磨かなければならない。
アルツハイマーも神経変性疾患で、いろいろ教科書に臨床症状が書いてあるが、実際、失認とはこういうことか、失行とはこういうことかと、患者を診て実際の臨床症状に接しないと、容易に誤診する。
いや記憶障害でも、いろいろなタイプがあり、アルツハイマーの体験記憶障害がどういうものかを知らないままでアルツハイマーと診断してしまうことが日常茶飯事で起こっている。
その代表的な例がクリスティー・ボーデン著「わたしは誰になっていくの?アルツハイマー病者から見た世界」に描写されている彼女の記憶障害である。かなり以前に彼女の記憶障害は、アルツハイマーのそれと似て非なるものであると詳細に論じておいた。しかし彼女の本は医療関係者だけでなく、一般の人にも広く読まれ、アルツハイマーの人もはっきりした自己主張ができると、認知症対策のバイブルとして活用されている。
日本にも数回講演にやってきて、抗認知症薬服用で長期間病状の進行がなく、一般人と同じ生活ができるとの広告塔になっている。嗚呼!
アルツハイマー型を理解するためには、もっと誠実な経験を積み、知識を積み上げねばならない。数量化で判定できるところまで行っていないというのが、私の立場である。

by rr4546 | 2014-01-23 18:54 | 医療関係 | Comments(0)
認知障害を来す疾患にはいろいろあるが、最近の我が国の研究ではおおよそ7割がアルツハイマー型だと考えられている。私は、年齢や臨床症状を丁寧に診ると、アルツハイマータイプは意外に少ないのではないかとの印象を持つ。こんな発言をすると認知症の権威たちは、専門外の臨床医のたわごとと一蹴されるであろう。そうかもしれない。
しかし典型的なアルツハイマーの臨床症状と比較すると、特に超高齢者の認知障害の症状は明らかに違う。アルツハイマー患者には独特の雰囲気がある。君の言う独特というのは何かといわれれば、私の貧弱な語彙では十分説明できない。残念!
年齢などを考慮した認知障害患者の早期の鑑別診断に関する解説にお目にかかったことがない。これは認知症患者を注意深く診察しないためのチョンボだと思う。ここまでは日頃の愚痴。

最近私の手元に届いた医師会員に配布された京都市、京都府医師会・認知症疾患医療センター監修の認知症早期診断のチェックシート―認知症に早く気付けば症状を軽くし、進行を遅らせることができますと相変わらず楽観的なことがうたってあるーを紹介して、感じたことを書いておきたい。
チェックシートは「自分でチェック」と「家族・身近な人でチェック」の二つからなっている。勿論年齢に関する言及はない。
自分でチェック項目は以下のごとく。
1 ものをなくしてしまうことが多くあり、いつも探し物をしている。
2 財布や通帳など大事なものをなくすことがある。
3 曜日や日付を何度でも確認しないと忘れてしまう。
4 料理の味が変わったと家族に言われる。
5 薬の飲み忘れや、飲んだかどうかわからなくなることがある。
6 リモコンや洗濯機などの電化製品の操作がうまくできない。
7 イライラして怒りっぽくなった。
8 一人でいると不安になったり、外出するのがおっくうになったりする。
9 趣味や好きなテレビ番組を楽しめなくなった。
一つでも思い当たる場合は、かかりつけ医などの医療機関や「認知症等の相談できる窓口」を参考に、これらのことを早めに相談してみましょうとある。
「家族・身近な人でチェック」の表もここで紹介したいが、こんなことで臨床医が認知症を診療しているのかと素人の方が思われたら、認知症診療の信頼が揺るぎかねないので省略。
自分でチェックしてみたら、一つどころか4以外はすべてが該当するではないか。
しかし幸いまだ医師として、少しの働きで、結構な報酬をいただいている。
身内に開業医が二人いるが、私は教え子ご夫婦M.A.& M.A.先生-二人には本当に感謝している。二人とも育ちがいいせいか、気持ちのいい性格で、老いぼれた私にいまでも丁重に接してくれる。その上腕も確かーを信頼して診てもらっている。心臓の精密検査を受けるよう診察のたびに言ってくださるが、頭のほうの検査をすすめられたことはない。チェックシートを見せても同じである。
プールで頭を打つようなバカなことをしないようにとたしなめられるだけである。いつまで若いと思っているのだと呆れられているらしい。
ただ素人の方がチェックシートに該当することがあると受診すれば、HDS-Rで点数をつけられ、10時10分を書かされー90歳でもHDS-Rは30点満点が正常だと信じられている。90歳の正常値は誰も知らないー、MRIで頭部の検査が行われ、病名をつけられ、早い目に治療して、大変なことにならないようにしておきましょうと薬が処方されるのではないだろうか。心配してこられた患者に大丈夫ですよとはなかなか言えない。
楽観的なことを言って後で誤診されたと言われたら、大変である。これは癌患者の予後についても、医師は自分の思っている以上に短く言うのが常である。予後6か月といわれたのにもう一年も元気、よく巷で耳にする。予後6か月と説明して、3か月で亡くなられたではこちらの立場がないではないか。自己保身の予後宣告である。
こんなチェックシートを医師会員全員に配布したら、認知症患者がまた増えるであろう。配布している。マスメディアが認知症患者についての楽観的な現状報告や、新しい抗認知症薬を紹介すると認知症患者が爆発的に増えると同じように。嗚呼!
本当にチェックシートを使うと、認知症の早期診断に有用であるのだろうか。
現在、アルツハイマー型に限り世界中で早期診断法の確立のための大掛かりな研究が行われている。
髄液中のTau、Aβ1-42(βアミロイド)量、apoEε4遺伝子検査、脳血流代謝(CBF-SPECT,FDG-PET)、アミロイドイメージング、海馬萎縮(MRI)、認知機能(HDS-R、MMSEなど)、ADLなどを使って早期診断法が開発されている。先日話題になったねつ造事件を起こしていたJ-ADNI(Alzheimer‘s disease neuroimaging initiativeの頭文字をとっている)研究もアルツハイマーを早期に診断するための国家プロジェクトである。早期診断がないから研究が行われているのである。
チェックリストなど使うよう奨励すると、医者の習性として、転ばぬ先に杖式に、過剰に診断して、うまくいっている、うまくいっていると騒ぎ立てるような面妖な診療現場の出現を助長するように思う。
もっと真面目に認知症対策に取り組まなければならない。ねつ造したデータで早期診断法を確立しても、患者のために何も役立たない。
国民もお上に任せっぱなしにしておくと、誰もが病人にされるであろう。嗚呼!
続く

by rr4546 | 2014-01-16 15:42 | 医療関係 | Comments(0)
齢者のcommon diseaseとして認知症、糖尿病、高血圧そして骨粗鬆症などがある。高齢患者は医療機関に押し寄せており、一般の方はこれらの疾患の診断や治療は確立されていると思われているであろう。ただ現在でも高齢者のcommon diseaseに関する診断基準や、従来行われていた治療の問題点がわが国や先進諸国から指摘されて、高齢者医療もどんどん洗練されている。
今回は認知症をとり上げ、認知症をどう理解し、私どもはどう付き合っていくべきかを考えてみたい。
認知症の権威がいっていることや、厚労省が目指している方向とは必ずしも同じではない。ただ実際数多くの認知症患者を診ているものの現場からの真面目な報告として、読んでいただきたい。
アルツハイマー型認知症―生活障害病
アルツハイマー型は記憶中枢である海馬を中心として内側側頭葉や帯状回後部の脳細胞が変性・死滅して起こる認知症で、体験したことをすっぽり忘れ、時間や場所を間違え、判断力が低下する。患者を診ていると、脳細胞が徐々に破壊されていく印象があり、βーアミロイド学説が提唱されているが、狂牛病にみられるプリオン蛋白のような異常蛋白が、アルツハイマー型認知症を発症させているのではないかとの印象を持つ。多くの神経変性疾患と同様、正確な発症機序はまだわかっていない。従って根治療法はない。家族の方には、進行性でガンと同じような脳の厄介な病気で最後は赤ちゃんになるとお話しする。
Alzheimer型認知症は物忘れの病気と思いがちであるが、普通の生活が送れないのが特徴で、私はこの認知症を生活障害病とよぶ。電話、食事の準備、お金の管理、事務処理に支障をきたし、仕事場や家庭はてんてこ舞いである。
治療薬は現在4剤あり、治療効果は桜・猫・電車を記憶できるとか、野菜の名前がどれだけスムースに言えるかなどで調べるが、いくら桜・猫・電車が言えるようになっても、生活障害は改善されない。認知機能の変化も100点満点のうちの3,4点の変化を有効と判定しているに過ぎない。
認知機能には記銘力、遅延再生、短期記憶、場所・時間の見当識、空間認知、判断力などがあるが、抗認知症薬がどの認知機能を改善させるかはっきりしていない。
服薬する場合は、副作用(副交感神経刺激症状、易怒性、歩行障害、頻尿、めまい、傾眠)や生活障害の改善への効果について主治医とよく話し合う必要がある。臨床の現場ではほとんど効果判定が行われないで、漫然と投与が行われている。
軽度の認知障害(MCI)の段階で4剤いずれを服用しても、副作用が認められるが、認知症発症に対する予防効果がないと報告されている。早期治療が難病克服の第一歩であるが、信頼のできる早期診断は現時点では確立されていない。従って早期診断・早期治療は耳触りがいい国家目標であるがAlzheimerに関しては現時点では絵に描いた餅である。
徘徊、弄便、昼夜逆転などの周辺症状(BPSD)は現在ほとんどコントロールできる。患者との信頼関係が基本であるが、身内は感情的になって虐待まがいなことこそすれ、信頼関係は築けないと腹をくくるほうがいい。介護関係の人たちの援助を受けるべきであろう。
それでも不穏、易怒性、声出し、物盗られ妄想が続けば、障害された脳の情報伝達系の異常か、残された正常の脳の異常反応のどちらかを見極めて、前者の場合は抗精神病薬を後者の場合は抗不安薬を少量使うと落ち着く。
厚労省のホームページにBPSDの対応ガイドラインが乗っているが、抗認知症薬の使用が勧められている。認知症患者はほとんどの症例でAlzheimerだけに適応がある抗認知症薬が投与されている。それでBPSDが出て困っているのに・・・・。
BPSDに定型的あるいは非定型的抗精神病薬を投与すると死亡率が上昇するとアメリカから報告された。しかし日本での臨床研究ではむしろ寿命が延びたとの成績が得られているらしい。
認知症患者に多彩な周辺症状が出ると精神科に紹介される。精神科医が認知症患者のBPSDに対して特別な対応策を持っているわけではない。鎮静をかけるために多量な向精神薬を投与するだけである。患者の尊厳のことを考えれば、精神科受診はなるべく避けるべきである。
糖尿病性認知症―低血糖
最近糖尿病患者に認知症がよく合併することがわかってきた。私の経験では、低血糖による脳障害あるいは脳血管性認知症が大部分である。アルツハイマー型と違って、元気な印象や取り繕いなどのわざとらしい症状はなく、うつ状態で活気を失い、食事、入浴、排泄行為が徐々に障害され、進行すると日常生活すべてに介助を要するようになる。
実際低血糖発作を繰り返すたびに、認知症の発症頻度が上昇すると報告されている。治療中に、冷汗、動悸、震えなどを経験して、砂糖を舐めれば軽快するが、低血糖発作は認知症のリスクファクターであることを知っておくべきである。
糖尿病の新薬が出たこの1,2年で糖尿病性認知症をよく経験するようになった。
昨年5月糖尿病治療の新しい血糖目標値が示された。高齢者で何らかの精神的あるいは身体的障害があればHbA1cは8%未満を目標とするとされた。厳格な血糖コントロールをすると低血糖発作、転倒あるいは脳卒中が増え、糖尿病関連死が増加することがわかったからである。糖尿病は以前信じられていたように、The lower、the betterではなく、高齢者ではThe lower、the worseの場合がある。健常を目指して頑張ると、逆に予後を悪くすることがある。年齢相応の治療目標が必要である。高齢者疾患は一筋縄では対応できない。ただ糖尿病性合併症を防ぐためにはHbA1Cを7%未満にすることが勧められている。可能であれば7%未満をめざし、血圧やnon-HDLのコントロールも厳格にするべきである。
予防できる認知症であり、発症しないよう糖尿病治療を正しく受けるべきであろう。
加齢関連認知症―加齢現象は病気か?
大凡80~85歳以上の高齢者の方で物忘れが激しく人格も変わってしまう患者がいる。人物認識も障害され、昔「脳軟化」と呼ばれていた疾患に相当する認知症でないかと考えている。進行の程度や言語的コミュニケーションの一部が保持されていて、丁寧に診ると明らかにアルツハイマーとは違った臨床症状を示す。最終的には赤ちゃんになるが。
多発するラクナ梗塞、脳動脈硬化そして脳代謝の機能低下など加齢によって生じるもろもろの異常が絡み合って引き起こされると私は考え、これを加齢関連認知症と呼んでアルツハイマーと区別している。勿論診断の困難な超高齢者にみられる嗜銀顆粒性認知症や神経原線維変化型老年認知症も少なからず含まれているであろう。どれもビタミン剤のように抗認知症薬が投与されるが効果はない。
ただ多くはアルツハイマー型との混合タイプと診断され、抗認知症薬が投与されている。超高齢者にアルツハイマーにみられる異常が脳で起これば、認知機能の障害は急速に悪化するであろう。
なるべく集団での生活に親しむよう工夫する。環境にうまく適応すればかなり長期間穏やかな老後が確保できる。
加齢現象を病気と間違わないよう。加齢を直せと迫られると、不老不死の薬を頼まれた仙人のように、効果のない妙薬?を処方して一件落着とされる。歳が来れば、医療に頼らないで、穏やかな死を迎えたい。
ただ先日、菩提寺で「糖尿病の話し」をした際、あとの懇話会で「先生、ここが悪いといって、医療機関を受診して、加齢です」と言われたら身も蓋もないと訴えられた。もっともな話で、私も何か訴えられれば「ここが悪いでしょう。この薬を飲んでください」といいますねと笑ってしまった。ただ加齢による病気まがいな症状があることだけは知っておきたい。100歳でも元気な人がいれば、70歳過ぎて老年症候群まがいのよぼよぼの人もおり加齢は個人差が大きいことも知っておくべきであろう。

by rr4546 | 2014-01-09 11:50 | 医療関係 | Comments(0)