医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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薬害肝炎訴訟雑感

 5年という歳月をかけて争われた薬害肝炎訴訟は本年一月の「薬害肝炎救済法」の制定で解決への道筋がついた。この訴訟の報道に接するたびに、色々な事を考えさせられた、そのことをまとめておきたい。
 凝固因子製剤によるHIV感染は男性のみ、今回の凝固因子製剤(フィブリノーゲン、クリスマシン等)による肝炎患者は凝固因子欠乏のない女性が主。出産時の大量出血に汚染した血液製剤が投与されたことによる感染らしい。そして被告は製薬会社と厚労省。この両者の誤判断による薬害ということで一件落着した。私はかっては臨床輸血学に携わっていたので、汚染した血液製剤を処方した医師にも一端の責任があるのではとこの訴訟の成行を見ていた。そう考える理由を二点指摘しておきたい。
 出産時(あるいは外科手術の時)はフィブリノーゲンを始め凝固因子は過剰に産生されて、過凝固状態になっていることは医学的な常識である(寮隆吉 ベッドサイドの新輸血学―効果的な輸血・輸液の実際 メジカルビュー社)。果たして出産等の出血時に凝固因子の投与が必要であったのかどうか、そして凝固因子投与によって止血という臨床的効果が得られたのかどうかかなり問題があるように思う。実際現在、以前使われていたような形で凝固因子製剤が出血に対する治療薬として使われていない。投与しなかったために、大量出血による死亡事故が起こったと言う話も聞かない。先天的な凝固因子欠乏症を除いて、凝固因子補給の必要な場合は、大量出血で凝固因子が希釈された時と、異常に消費された時だけである(厚労省 血液製剤の使用指針)。
 今回の健康な女性が血液製剤で肝炎になった事件は、出血にフィブリノーゲン製剤や第Ⅸ因子製剤が止血に有効であるとの治験データが揃ったことを発端として始まったということができるであろう。凝固因子製剤が止血剤として臨床的に有用であるとの判断がなければこの製剤は医療の現場に提供されることはなかった。効果があるとのお墨付きをもらって市場に出さない企業はない。そして市販されて医療現場で安易に止血剤として使われて、正常なご婦人方にC型肝炎を感染させた。事件を招いた原因は適応が極めて限られている凝固因子製剤を止血剤として使ってよいというデータを出した医師たちに一部あると考えてもいいのではないだろうか。医師の責任について余り論じられなかった。
 なぜ凝固因子製剤が正常なご婦人方に投与されたかの経緯について我々はもっと真剣に議論するべきであろう。
 もう一つ指摘しておきたいことは、止血剤として凝固因子製剤が保険適用になっても、実際投与をするのは現場の医師の裁量に任される。処方する医師がその血液製剤の安全性、言葉を変えて言えば副作用について理解しないで処方したことも、健康なご婦人方に肝炎という重荷を負わせた原因の一つであろう。副作用についてもっと注意深く学んでいれば、これほどの被害の広がりはなかった。実際クリオ製剤を使ってHIV患者を出さなかった医師がいる(内田立身 真実を直視するー薬害エイズ訴訟の証人医師として)。この歳になっても同僚に指摘されて冷や汗をかくことを度々経験している。命を預かる医師は最新の情報を集めて医療に取り組むべきであることは今回の事件は教えているように思う。薬害は、製薬企業の倫理に則った販売、患者を主役とする医療行政の徹底、医師の責任の明確化のあらゆる方向からのアプローチがなければこれからも起こると思う。薬害が起こった場合には、医師にも責任があるとの発想を持つことも大切ではないかと思い問題提起をさせていただいた。


by rr4546 | 2008-07-29 15:40 | 医療関係 | Comments(2)