医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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中尾實信著「小説木戸孝允上―愛と憂国の生涯ー」




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中尾實信先生が最近上梓された「小説木戸孝允―愛と憂国の生涯」上巻をAmazonを介して送って下さった。上巻と銘打ってあるが796頁のずっしりと重い大作である。いずれ出る下巻と合わせると、最近あまり手のすることのない長編作品を読む機会が与えられるのであろう。楽しみである。

中尾先生は30数年以上前、私が神戸大学病院に赴任した当時すでに血液学で多くの業績を上げ、神戸大学第二内科の助教授を務めておられた。血小板・巨核球関連の研究に携わっていた私は、先生が持っておられたK562という白血病細胞株を分けていただいて、巨核球の分化や巨核球白血病の性状解析の研究で院生とともに原著英文論文を30編くらい書き上げた。小生の研究生活での恩人でもある。

当時からいかにも俊秀で学者然とされていたが、すでに忙しい臨床や研究生活の合間に長編小説を上梓されていた。当時は研究生活一筋の先生と敬愛させていただいていたが、先生の初期の代表作である半自伝的な「静かなる崩壊」を読んで、先生が大学病院での研究だけでなく、文学にも非凡な才能をお持ちであることを知って、驚かされ、その後先生の作品は必ず読んでいる。どの作品も読み終わった後に、一段と深い世界に導かれたとの満足感が与えられ、先生のファンと言ってもいいであろう。

先生は読者を飽きさせることなく、引き込ませる流麗な文体をお持ちだけではなく、構成も見事で、素人の私が言うのも説得力がないが、現代活躍するわが国の長編作家の5本の指に入るお一人だと思う。

「小堀遠州」では茶の湯、庭園造りや和様建築という日本固有の文化の草創に深く寄与した遠州を見事に描き上げられた。二条城の近くに住む私は先生の作品を手引きにして日本文化の神髄に触れようと今でも庭園などを訪ねている。

「森鴎外」では明治という新しい時代を作るために、選ばれた秀才たちがヨーロッパで何を学び、何をわが国に持ち込んだかについて多くを学ばせていただいた。秀才たちの人間臭いエピソードだけでなく、鴎外の初恋についても瑞々しく書き上げられた。

買い込んだ本はいくら感銘を受けても、処分することにしている。数年前、愛読する本が二部屋にも溢れかえり、本に押しつぶされそうになりいくら思い出深い本でも、断捨離よろしく処分することにしているが、中尾先生の本は唯一残した本箱に残っていた。

「木戸孝允-愛と憂国の生涯―」の表紙とともにここに残しておく。トリミング技術が十分ではなく見苦しいが悪しからず。「木戸孝允」の最初のページに中尾先生の思いを込めた献辞が挙げられている。

「人は煩悩の器であり

病の器でもある

誰しも

生き抜くことは難しい

ましてや

美しく生きることは

至難の業である」



by rr4546 | 2018-03-30 17:30 | その他 | Comments(0)