医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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寄り道 副作用を効果と判定している可能性のある症例 No2 介護士の貢献

抗認知症薬の効果と副作用にパラノイッシュに異議申し立てているようで、書き続ける気力ももうガソリン切れである。ただ私がこの論考を書き続けているのは、抗認知症薬があまり効かないとの理由ではない。薬効の定かでない薬は驚くべきほど多い。抗認知症薬にこだわるのは、薬効が疑わしいのではなく、副作用で認知症患者に二重三重の苦しみを与えているからである。この副作用から解放されない限り、認知症医療など成り立たない。そのことに警告を与えているのである。
厚労省の勧めるBPSDの対応(認知症国際会議 No12 思いつくままに No2 BPSD-焦燥性興奮の治療 BPSDの治療ガイドラインとの比較 2015年6月30日)にせよ、認知症患者の診療に携わっている医師たちが行っている治療にせよ、全く真逆の対応が少なくとも私の診ている患者では奏功する。
私だけが特殊な認知症患者に接しているのであろうか。
今回は前回紹介した症例を約3か月間わたしたちの施設でfollowして、落ち着かれたので4月2日に退所された際、主治医に書いた紹介状である。
抗認知症薬の副作用を効果だと判定していたと考えるしかない症例だと思う。
ご連絡事項:
平成28年1月26日に、夜間不穏、ADLの低下で4月2日まで入所されました。以前より当施設のショートステイを利用されています。
入所時、無意味で理解できない多弁、夜間不穏、徘徊行動があり、穏やかな日常生活を確保するという治療目標で対応しました。
まず、H2-antagonist(ファモチジン)が認知症患者の不穏に影響することが知られていますので中止。無意味な多弁等のtensionの上がった行動は軽減せず、レミニ―ル(8)1錠に減量。やや落ち着かれましたが廊下の徘徊、他人のベッドののぞき込みなどの不自然な行動継続。レミニ―ルを半錠に減量。この間活気が低下してレミニ―ルを1錠に増量。しかし不穏等がありレミニ―ルを半錠そしてほぼ30日かけてレミニ―ルを中止いたしました。セロクエール(25)1錠を眠前に投与するだけで夜間不穏、無意味な多弁などの症状も消失して、穏やかな入所生活を送られました。認知機能は行動観察方式であるNMスケールでfollowしましたが、悪化を思わせる成績は全く得られませんでした。
なお入所後ADLを確保するために、テーブルふき、ロビーの掃除などを手伝ってもらいました。指示がよく入り、与えられた仕事を少しの介助で淡々とこなされました。他に社会的接触を増やすために体操、風船飛ばし、外出レクなど介護士たちがレクレイションと呼ぶ集団で行う行事への積極的な参加を促しました。外の散歩も好きで、散歩中昔器械体操の選手だったことなどを積極的に話されました。古い記憶はかなり鮮明であり、脳活性化として回想療法に積極的に取り組みました。介護士たちの貢献は特筆されます。T氏の認知機能の維持と情緒の安定に大きく貢献しました。
レミニ―ルの効果はADAS-Jで示されます。改善するADAS-Jの色々ある下位項目のうち改善項目は言葉数の増加、動きの活発化などの限られた項目だけに有意な効果があることが示されています。T様の場合は経過からみると、抗認知症薬の作用が副作用として出ているだけの印象を持ちました。副作用を効果と考えられているケースは、外来で経過を見ている患者によく見られます。短期記憶障害、場所・時間の見当識障害、抽象的思考の障害には効果がないように感じます。この患者の精神的な安定は抗認知症薬の中止も貢献していると考えられました。
入所時低K+血症がありK+補給が行われていましたが、K+低下を来す原因疾患見当たらず、抑肝散の副作用を疑い中止。K+は3月9日には4.1mEqと改善していました。
またcreatinineが1.61mg/dlでクレメジンが投与されていましたが、患者が飲むのを嫌がり、検尿で潜血や蛋白いずれも陰性。糸球体腎炎、糖尿病性腎症などのように進行性で透析に至るか可能性が低いCKDと診断して、クレメジン中止。ただ食事で蛋白55g制限を行いました。3月25日の検査ではcreatinineは1.65mg/dlと増加傾向示さず。CKDは加齢か高血圧によって引き起こされたものと考えています。
血圧は高齢者特有で128~178/62~74と変動が大きく、どちらかと言えば朝方高血圧を示すnon-dipperタイプ。ただCKDもあり、130/80を目標として、食塩6g制限、サイアザイド系利尿薬、Ca拮抗薬投与。ただnon-dipperの傾向取れず、アルダクトンを追加したところ降圧目標がほぼ達成できました。
なお、Alzheimer型に脳梗塞が合併した患者でこれからも多彩なBPSDが出てくることが予測されます。
そこで抗血小板療法はアスピリンではなくて、脳血管拡張作用も持ち、認知機能低下を予防するといわれているプレタールを投与しました。頭痛などの副作用もなく経過しています。
私どもの立場でいえば日常生活に支障が出ている認知症の例の治療目標は、中核症状の進行遅延だけではなく、いかに穏やかに周囲のものと生活を送れるかかに注力するべきだと考えています。ご家族の希望も確認しています。入所時の処方はかなり変更しました。ご了解ください。
Rp
1 シロスタゾール(100) 2錠
2 フルイトラン(1) 1錠朝
3 アルダクトンA(25) 1錠 
4 アムロジピン(5) 1錠 夕
5 セロクエール(25) 1錠 PM8時
入所時
Rp
1 レミニ―ルOD(8)  2錠 2x分
2 ビオフェルミン  2錠 2x分
3 アスパラカリウム 300  2錠 2x分
4 ガスター(20) 1錠
5 バイアスピリン 1錠
6 抑肝散5.0 2x分
7 ザクラス配合錠(ARBとCa+拮抗剤の合剤)
8 セロクエール(25) 2錠 眠前
8 クレメジン 2g 昼    
コウノメソッドも抗認知症薬の減量で、認知症患者の精神的安定を確保して、少量療法が有効だと勝手に思い込んでいるだけだと思う。次回は抗認知症薬の効果判定に使われるADASやSIBが副作用と考えていいと思われる下位項目に高い得点を与え、見掛け上抗認知症薬の効果を水増ししている可能性について触れる。
その後:
小生現在週二回の勤務である。T氏とは4月2日に退所した後、7日本日まで会う機会がなかった。久しぶりに顔を合わせたが、先生のことを覚えているかと話しかけたら、言葉はなかったが満面の笑顔で懐かしそうにされた。ケアマネに尋ねたところ、退所時の処方を主治医が継続しているという。ショートスティの際もたびたびこちらの情報を伝えたが、無視されて残念な思いをしていたが、やっとこちらの観察にも耳を傾けたらしい。認知症患者は多職種の人たちの24時間にわたる接触に基づいた意見を参考にしなければ、適切に対応できないことを再確認した。


by rr4546 | 2016-04-06 15:45 | 医療関係 | Comments(0)