医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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認知症国際会議  No14 思いつくまま 糖尿病性認知症―過剰な血糖管理?ー医療マフィアー

糖尿病に認知症が高頻度に合併することは一般医家にもよく知られるようになった。研究会で面識のできた神経内科医S先生は自前の臨床研究から糖尿病患者の認知症発症のオッズ比は非糖尿病患者の7~8倍にのぼったと驚きをもって教えてくださった。看過できない高頻度である。認知症を日常的に診ているわたしの実感でも、ここ1~2年で糖尿病認知症とわたしが勝手に診断している患者は数倍に増加している。このBLOGでもたびたび取り上げた。インクレチン関連薬が広く使われるようになった時期と一致している。
再掲
2014年3月13日  寄り道 糖尿病―the lower、the worse?
糖尿病治療を長期に受けて、その間低血糖発作を時々来し、認知症を発症した症例をお示しします(表24)。79歳男性で平成16年から2型糖尿病の診断のもとにSU薬で糖尿病治療を受けていました。徐々に物忘れが始まり、平成17年の画像診断では多発性脳梗塞の診断を受けました。しかし平成23年6月頃より糖尿病のコントロールが不良ということでインクレチン関連薬(エクア50mg2錠)が追加された。その後時々軽い意識消失(脳梗塞発作の再発と診断されていた)を来しADLが低下してアルツハイマー型認知症の診断でアリセプト10mgの投与を受けていました。平成24年1月に当施設に入所。入所時の一日血糖は空腹時68mg、朝食後2時間127mg、昼食後135mgそして夕食後139mgでただちに糖尿病治療薬を中止。HbA1C 6.8%であった。図8に入所時の活気のない姿を示します。休薬2か月後には一人で椅子に座れるようになりました。ADLが低下し自分のほうから言葉を出すことはない。ただ話しかけると自分の趣味などについて正確に会話が可能。アルツハイマーとは明らかに違う臨床症状です。そこでこの患者は低血糖発作を繰り返し、脳が障害を受けて認知症を発症したと考えました。
少し話が前後しますが最近糖尿病性認知症についてマスコミなどがよく報道しています。高血糖やインスリン抵抗性が糖尿病患者にアルツハイマー型認知症を発症させると解説されていますが、本当でしょうか。インクレチン関連薬が臨床の現場で使われるようになってから、今回のような症例によく遭遇するようになりました。
糖尿病性認知症は低血糖による脳障害、脳血管性による脳血流低下そしてアルツハイマー型と脳血管性が合併する3つのタイプがあり、私の経験では糖尿病の新薬が広く使われるようになってから糖尿病に認知症が合併する例によく遭遇しますので、糖尿病性認知症は低血糖による脳障害の頻度が一番高いように思います(表25)。実際、低血糖による認知症は活気がなく、ADLが障害されますが無理やり話を聞くとかなり知的な会話が可能。臨床的に明らかにアルツハイマー型と異なります。糖尿病性認知症の多くは医者が作った医原病の例が多いのではと考えています。
NHKの医療関連の製作スタッフに医療マフィアに抱き込まれた人がいますね。医療マフィアは腰を低くしていますが、帰りの居酒屋でディレクターを肴に笑って酒を飲んでいます。抗認知症薬、痛み止めや抗血栓薬、以前には経口糖尿病薬に関しても公共放送は熱心に取り上げましたね。脳梗塞の予防薬である新規の経口抗凝固薬(特定の凝固因子を特異的に阻害して、血を固めないようにする)はその作用を中和する薬が臨床的に使えないので、脳出血などの合併症が起こった場合、多くの例で重篤な出血に至る。元衆議院議長町村信孝氏も脳梗塞の治療のために、議長を辞すると表明した1か月後に死亡しましたね。脳梗塞では現在こんなに簡単に死なない。多分脳梗塞予防薬の、新規経口抗凝固薬(NOAC)ー全く情報がないのに決めつけるのはよくないですがーによる副作用による出血死ではないでしょうか。凝固異常(血がさらされになること)があって、脳出血を起こし、それに対する治療法がなければ、死に至る可能性は高い。副作用が出てもそれを中和する薬がない新薬がバンバンと出ています。医師向け医療情報誌にはNOACがいかに優れているかについての権威たちの話が毎週載っています。非劣性とか、出血エピソードが低いとかわかったようなわからない理由で。脳卒中学会?や心房細動学会?がNOACを治療ガイドラインで推奨しています。よくわかりません。
ナットウキナーゼ協会が脳梗塞や心筋梗塞に納豆をどうぞと大々的に宣伝していますが、新規経口抗凝固薬の製薬会社が陰で暗躍しているのではないでしょうか。納豆を宣伝しても利益を生まないでしょう。癌、糖尿病、認知症(家族の人も含む)などにも患者団体がありますが、多くの場合患者のためではなく、陰で糸を引いている医療マフィアの先兵の集まりになるから困ったものです。患者団体がしっかりしていれば、糖尿病治療や認知症治療はもう少しましなものになっていたと思います。
医療マフィアの筋書通りに、医師、患者(家族)、大手の新聞社そして公共放送の医療担当者が振舞うので、当の本人たちは笑いが止まらない、いや恐ろしいいと感じているのではないでしょうか。一定のルールの導入が必要です。
中略
しかしJ-EDITやACCORD試験は血糖を下げすぎると合併症の頻度や糖尿病性関連死が上昇するとの報告であり、これらの成績は目標とする血糖値に下限値を設けよということです。新しい糖尿病目標値に下限値が書いてない。
糖尿病の治療現場でThe lower、 the better信仰が生き続け、治療によって脳卒中をよくおこしたり、早く死んだり、認知症になったりすることがこれからも頻繁におこると思います。(世界中から低血糖発作が糖尿病患者の認知症のリスクファクターであるとの報告が相次いでいる。高血糖が認知症のリスクファクターとの報告はほとんどない。NHKのディレクターはどこから医療情報を得ているのであろうか?医者は不勉強だから、患者教育をして、最善の医療を受けさせなければならない。いくらでも言い分はある。患者も診ていないのに。嗚呼! )
後略

現時点でわたしが診ている糖尿病関連の認知症患者のデータを挙げておく。
症例 M.U. 94歳 女性 認知症
糖尿病歴  約20年間
オイグルコン2.5mg 1錠(第二世代のSU剤)
ジャヌビヤ50mg 2錠(インクレチン関連薬、DPP4阻害薬)
メマリー20mg 1錠
他に降圧薬、脂質異常症治療薬、鎮痛薬(リリカ)、利尿薬
HbA1C(NGSP) 6.1%
症例 H. O. 86歳 女性 認知症 心筋梗塞 甲状腺機能低下症
糖尿病歴  約15年間
トラセンタ 5mg 1錠(DPP4阻害薬)
イグザレルト 10mg 1錠
チラージンS 25μg 1錠
アリセプト 5mg 1錠
メマリー 20mg 1錠
HbA1C(NGSP) 6.2%
特養に入所中、平成26年12月15日意識消失発作で入院。低血糖発作の治療を受けた。平成27年1月28日 心筋梗塞でイグザレルト投与開始。2年前まで当施設に入所。特養での往診医療が信頼できないということで特養を退所。4月21日ショートステイを利用するということでわれわれの施設に再入所(異例なことである)した。
NHKは認知症の最前線と銘打った番組の中で、糖尿病性認知症の治療としてインスリンの鼻腔からの吸入療法の有用性を繰り返して放送している。この番組を見た実地医家は治療をもっと厳格にしなければ、糖尿病認知症の発症や増悪は防げないと信じ込みせっせと血糖管理に励むであろう。実際糖尿病性認知症患者のHbA1Cは正常あるいは低値である場合が多い。嗚呼!
そして糖尿病の権威はインクレチン関連薬が生理的なインスリン分泌薬で、低血糖や肥満を来さないとその有用性について語るのを止めない。インクレチン関連薬は心不全による入院頻度を上げる(最近の研究では否定的なデータが出ている)との副作用や、糖尿病からくる心血管合併症の頻度を従来の薬に比較して下げないことにはほとんど触れないで。勿論インクレチン関連薬でも低血糖はおこる。
4月の横浜で行われた老年学会で、糖尿病性認知症はAlzheimerをを引き起こすβ-amyloid沈着説とは全く異なる機序で起こると権威が発表していた(羽生春夫 生活習慣病から見た認知症予防 日本老年学会雑誌 Vol52臨時増刊号 学術集会講演抄録集:p6,2015)。臨床観察から得ている感触から納得できるものだった。抄録を見ると学会場で聞いた内容と異なることが書いてある。別の演題で聞いたのかもしれない。いずれにせよ、Alzheimerにしか適応がない抗認知症薬は保険外投与である。あらためて効果の有無について結論を出さなければならない。ボケていれば全例にAlzheimerだけに適応がある抗認知症薬が、副作用や効果が評価されないでガバガバと投与されている。わたしの少ない診療経験から言えば、効果は全くない。副作用はある。これについては因果関係を証明したわけではないので、ここでは書けない。恐ろしくて書けない。
学会で一番感銘を受けたのは学会長の井藤英喜先生の「健康長寿とライフスタイル」の講演であった(同上p2)。
「J-EDIT研究では、脳卒中発症とHbA1Cおよび血圧との間にはJ-カーブ現象(高齢患者の血糖値や血圧を中年患者の目標値に近づけると、逆に合併症が増加する現象のこと)が認められる。高血糖の是正をはかるためインスリン治療を導入すると低血糖の頻度が高くなる。低血糖は認知機能低下やうつの有意なリスクとなる。高齢者の生活習慣病の管理では血糖、血圧に関しては“the lower、the better”とは言えず、成人とは異なった配慮が必要である・・・」。先生の長い臨床経験に基づいた講演で、深く感銘を受けた。高齢者を診るすべての医師に聞いてもらいたいと心から思った。井藤博士のような先生が、高齢者を診ていれば、わたしがここで書くことは何もない。それにしても糖尿病や認知症の権威は発言しないな?糖尿病学会は高齢者の厳格な血糖管理は認知症のリスクファクターになるとの注意喚起を行うべきである。NHKは鼻からインスリンを入れて血糖を下げて糖尿病性認知症を治療せよといっている。製薬会社主催の講演会では饒舌なのに。ヘボ医者が現在のBLOGを書いていると、本当だろうか、彼はパラノイッシュだと思われて信用されない。書いている日付が正確に記録されているのが、わたしの唯一の慰めである。
ともあれこの講演を聞いただけで、横浜に出かけた甲斐があった。博士の主張を患者治療に生かさなければならない。

by rr4546 | 2015-08-07 13:59 | 医療関係 | Comments(0)