医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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認知症国際会議  No 13  思いつくままに  No3 徘徊はBPSDか?

BPSD(認知症の行動ならびに精神症状の英語の略)は認知症患者にみられる言動・行動のすべてが含まれると定義されている(かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドラインから)。
最近マスコミなどで話題になっている認知症患者の行方不明事件は患者特有の「徘徊」という行動異常が招いた結果である。定義に従えば、徘徊は典型的なBPSDである。
ガイドラインのどこを見ても、徘徊への対応への言及がない。マスコミは行方不明者の多さを報道し、認知症の不気味な面だけを煽り、世間が頼りにしている権威たちはほおかぶりしてその対策を述べない。
結論から言えば徘徊は薬物で治療できない。非薬物的な介入でも防げない場合が多い。対応は後で述べる。残念な現況だが、専門家たちはその理由を含めて、ガイドラインの中で徘徊に対して何らかのコメントをするべきであろう。研究班まで組んで作成したものが厚労省のホームページで公開されている。
徘徊に対して権威たちがあまり発言しない理由が何かあるに違いない。
認知症患者の言動・行動異常を一括りでBPSDと定義することに無理があるのではないだろうか。
BPSDを損傷を受けた脳神経細胞由来の症状(中核症状)と、損傷を受けた部位の機能不全で、身体的あるいは精神的な刺激に正しく適応できないことによって生ずる症状(狭義のBPSD)の二種類に分けて考えれば、もう少し対応の方法をきめ細かく助言できるのではないだろうか。非薬物的介入や薬物療法の適応についても、もう少しわかりやすい手引書ができあがるのではないだろうか。
ガイドラインのように、BPSDをその由来に触れないで幻覚、妄想、攻撃性、焦燥、抑うつ、不安、緊張、易刺激性、入眠障害、中途・早期覚醒と臨床症状だけを挙げて、薬物療法の進め方を解説すれば、前回紹介したレミニール(アリセプト)、メマリーそしてセロクエル投与で廃人にさせられる症例はいくらでも生まれる。このような症例は全国いたるところで見かけるであろう。わたしの所属する地区だけの悲劇ではない。
徘徊に戻ろう。徘徊は認知症の中核症状からくるBPSDで、認知症特有の近時体験記憶障害と同じで、損傷を受けた神経細胞の再生がなければ改善できない。現時点では退行・死滅した神経細胞の再生はできない。従って薬物療法はない。アセチルコリン(アリセプト、レミニール、リバスタッチ)やNMDA受容体阻害(メマリー)には神経細胞を再生させる働きはない。
徘徊は認知症患者特有の場所の見当識障害、視空間認知障害そして近時体験記憶(すべて中核症状である)が重なって、出かける目的地が途中でわからなくなり、どこにいるか認識できないので、思いつくところを歩き回る現象である。その上、患者の多くは病識がないので、ここがどこですかと誰にも尋ねない。その結果行方不明になる。徘徊は周辺症状(狭義のBPSD)ではなく中核症状の一つである。
繰り返すが退行変性した神経細胞によってもたらされた近時体験記憶障害、場所の見当識障害、視空間認知障害は治療できない。われわれは神経細胞を再生させる技術を持っていないからである!従って徘徊は薬で治療できない。
認知症を薬で治すといっている手前、はっきりそれを指摘できないので、徘徊は治療ガイダンスから省かれたのかもしれない。ゲスの勘繰りであるが。嗚呼!
徘徊ははっきりした目的から生み出された認知症患者の中核症状である。家人や主治医は患者が何を望んでいるかを注意深く観察して、彼あるいは彼女の希望を叶えるための環境つくりをしなければならない。
突然甲子園球場に出かけることはない。友人の家や元住んでいた家に出かけて、結果的に徘徊するのである。
徘徊している患者は発見されると心の底から喜ばれる。徘徊して周りのものを困らせるなどの邪な思いはない。患者が何をしたいかについてよく理解して、もし外出する動機があればその対応をすれば、徘徊老人は減少するであろう。行方不明になっても容易に見出すことができるであろう。徘徊そして行方不明は多くの場合は家人や主治医の責任である。
物取られ妄想も大切なものを置いた場所を忘れ(中核症状)て探し回る、中核症状である。井上靖氏のご母堂が夜間懐中電灯をもって何かを探し回るBPSDも、彼女が何を探しているかにご家族が思い当たった時に、解決した(詳しい内容は忘れたので状況は間違っているかもしれない)。そして穏やかな最後を迎えられた。
前回取り上げた焦燥性興奮(不穏、昼夜逆転、暴力行為、介護拒否)は肉体的あるいは精神的なストレスに適応できないで出てきた精神症状で家人を最も困らせる周辺症状で、わたしはこの適応障害を厳密な意味でのBPSDと定義している。多くの人が認知症の中核症状と誤解しているが、それは間違っている。
家庭生活を困難にさせる焦燥性興奮を起こす可能性のある薬は止めるとのわたしの提案は、焦燥性興奮に対して医師がやれることの最初のことだからである。抗認知症薬の薬屋のパンフレット参照。このことは繰り返さない。

by rr4546 | 2015-07-14 15:39 | 医療関係 | Comments(0)