医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

Alzheimer型認知症の早期診断 No8 メマリーの効果はあるのかないのか?

脳出血や脳梗塞は血管障害が起こると同時に、障害された部位の神経脱落症状が出現する。それに反して認知症の場合は、認知障害を招来する分子レベルでの異常が脳細胞を傷害しはじめてからかなりの時(10年とも20年ともいわれる)が経ってから臨床症状が出現してくると考えられている。こういう言葉が妥当かどうか自信がないが、Alzheimerは発症から臨床症状が認められるまでの潜伏期間は大層長い。
現在のAlzheimer治療はかなり手遅れの時点で開始されていると考えられている。その上現在使われている4種類には根治効果はなく、進行を緩徐にするとわかったようでわからないような効能の下で患者に投与されている。
これらの薬は広く臨床の現場で使われているが、患者を実際見ている立場からすると、副作用が多いー多くは見落とされているー上に、効いていると思う症例でも、患者の生活障害が改善するのではなくて、何か無意味な多弁、多動そして取り繕いばかりが目立つようになり、不自然な振る舞いが増えている印象がある。
いや大部分の症例は効いているのか効いていないのか、全く手ごたえが感じられない。そのために主治医も患者家族も、厳密な評価なしで、進行が緩徐になると信じて投薬が続けられる。
面白い臨床研究を紹介しておきたい。
わが国では中程度から重度の進行を緩徐にするとして広く使われているメマリーは、わが国の研究(北村伸ほか:メマリーの中程度および高度アルツハイマー型認知症に対する長期投与の忍容性並びに有効性の検討。日老医誌 51:74-84,2014)では、認知機能の悪化を驚くほど抑制することが確認できた報告された。メマリーをAlzheimerの中程度から重度の症例につかえとの研究結果である。
一方同時期に行われた米国の研究(Dysken etal. Effect of Vitamin E and Memanntine on functional decline in Alzheimer disease. The TEAM-AD VA cooperative randomized trial. JAMA 311:33-44,2014)では、軽度あるいは中程度での症例でメマリーの進行抑制効果は全く認められない。一方Vit Eに軽度の進行抑制を認めたと報告された。
日本と米国のAlzheimer患者の悪化する機序が違うのかもしれない。
JAMAは基礎研究の最前線の研究を掲載するとすべての科学者が信頼しているNatureと同じように、臨床研究分野では世界中の臨床家が参考にする権威ある臨床雑誌である。われわれの間では評価が高い。
余談だが北村伸氏ほか共同研究者あるいは日老誌の編集者は、自分たちの出した結論を示して、Dysken氏らのメマリーが中程度の症例に対して進行抑制効果がないとの研究結果はねつ造された可能性があると抗議するべきであろう。ただDysken氏等の研究成果を支持する、他の臨床研究を2,3年前外国雑誌で見たことがある。
われわれしがない臨床医はメマリーの効果について、どちらの研究成果を信頼するべきか右往左往するばかりである。これらの矛盾したデータが出されるのは認知症の臨床症状の進行の程度を客観的にとらえることの難しさを示している。
国民病となることが予測されているAlzheimerに対して、あるところでやると効果があり、別なところでやると効果がないなどの臨床研究がある薬を使って治療するのはいかにも患者に面目ない。しかしこういう大切なことが真面目に議論されない。私が研究当事者であれば、自分が得たデータと異なった報告をする同業者に対して質問状くらいが出すが。
現在の認知症医療現場を知っているものは、症状修飾薬のような薬ではなく、根治薬を使ってAlzheimer診療を行いたいと願う。
根治薬は脳細胞が死滅してからでは、効果を期待できないかもしれない。そこで早期診断、いや超早期診断の試みが世界中でしのぎを削って進められているのである。早期に診断して根治を達成したい。
残念ながら現時点では、アミロイドβ産生抑制、凝集抑制、排出・除去を目的とした根治治療薬はどの薬も臨床効果が認められていない。
書いていて何が何だか分からなくなる。嗚呼!

Commented by 銀河旋風児 at 2014-05-02 21:36 x
最近の更新の進み具合は捗ってますね。
先週の週刊ポストの記事は、寮先生がこのブログでずっと言い続けてきたことだと思います。百害あっても一利があればよいのですが、薬の効果判定があいまいなまま、抗認知症薬が投与され続けること…このことに関する警鐘がマスコミに乗らないと、なかなか響かない現況を憂います。
by rr4546 | 2014-05-01 15:27 | 医療関係 | Comments(1)