医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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病院ニュースー高齢者の生き方

昨年の10月、岐阜の方で病院や介護施設を手広く展開している畏友宇佐美一政先生から、彼の病院の広報紙への原稿の依頼を受けた。数日前に出来上がった広報誌が届いた。患者さん向けではあるが、小生が日頃感じていることが書いてあるので紹介しておきたい。彼の心温まる紹介文も再掲する。
「泰玄会ニュース春号をお届けさせていただきます。 本号には神戸大学名誉教授寮隆吉博士にご寄稿いただきました。 寮教授は大学時代は血小板機能の制御機構、巨核球の分化、巨核球性白血病そして輸血医学の研究の第一人者としてご活躍で大学退官後は老人問題、特に認知症について深い洞察を加えられ著作を世に出しておられます。 今回は後者につきましてご寄稿いただきました。 寮博士の視点は私達に老人問題という命題につきまして深く考えさせるものがあると思います。お読みいただけましたら幸いです。
泰玄会病院   宇佐美一政」
      

高齢者のcommon diseaseとして認知症、糖尿病、高血圧そして骨粗鬆症などがあります。高齢患者が溢れていますので、これらの疾患の診断や治療は確立されていると思われているのではないでしょうか。ただ現在でも高齢者のcommon diseaseに関する診断基準や、従来行われていた治療の問題点がわが国や先進諸国から指摘されて、高齢者医療もどんどん洗練されています。是非新しい情報を手に入れてよりよい医療を受けてください。
今回は認知症をとり上げ、認知症をどう理解し、私どもはどう付き合っていくべきかを考えるための情報を書いておきます。
認知症の権威がいっていることや、厚労省が目指している方向とは必ずしも同じではない。ただ実際数多くの認知症患者を診ているものの現場からの真面目な報告として、読んでいただきたい。
アルツハイマー型認知症―生活障害病
アルツハイマー型は記憶中枢である海馬を中心として内側側頭葉や帯状回後部の脳細胞が変性・死滅して起こる認知症で、体験したことをすっぽり忘れ、時間や場所を間違え、判断力が低下します。患者を診ていますが、脳細胞が徐々に破壊されていく印象があり、βーアミロイド学説が提唱されていますが、狂牛病にみられるプリオン蛋白のような異常蛋白が、アルツハイマー型認知症を発症させているのではないかとの印象を持ちます。多くの神経変性疾患と同様、正確な発症機序はまだわかっていません。従って根治療法はありません。家族の方には、進行性でガンと同じような脳の厄介な病気で最後は赤ちゃんになるとお話しします。
Alzheimer型認知症は物忘れの病気と思いがちですが、普通の生活が送れないのが特徴で、私はこの認知症を生活障害病とよびます。電話、食事の準備、お金の管理、事務処理に支障をきたし、仕事場や家庭はてんてこ舞いです。
治療薬は現在4剤あり、治療効果は桜・猫・電車を記憶できるとか、野菜の名前がどれだけスムースに言えるかなどで調べますが、いくら桜・猫・電車が言えるようになっても、生活障害は改善されません。認知機能の変化も100点満点のうちの3,4点の変化を有効と判定しているに過ぎません。
認知機能には記銘力、遅延再生、短期記憶、場所・時間の見当識、空間認知、判断力などがありますが、抗認知症薬がどの認知機能を改善させるかはっきりしていません。
服薬する場合は、副作用(副交感神経刺激症状、易怒性、歩行障害、頻尿、めまい、傾眠)や生活障害の改善への効果について主治医とよく話し合ってください。臨床の現場ではほとんど効果判定が行われないで、漫然と投与が行われています。
軽度の認知障害(MCI)の段階で4剤いずれを服用しても、副作用が認められますが、認知症発症に対する予防効果がないと報告されています。早期治療が難病克服の第一歩ですが、信頼のできる早期診断は現時点では確立されていません。従って早期診断・早期治療は耳触りがいい国家目標ですがAlzheimerに関しては現時点では絵に描いた餅です。
徘徊、弄便、昼夜逆転などの周辺症状(BPSD)は現在ほとんどコントロールできます。患者との信頼関係が基本ですが、身内は感情的になって虐待まがいなことこそすれ、良い関係は築けないと腹をくくられたほうがいい。介護関係の人たちの援助を受けてください。
それでも不穏、易怒性、声出し、物盗られ妄想が続けば、障害された脳の情報伝達系の異常か、残された正常の脳の異常反応のどちらかを見極めて、前者の場合は抗精神病薬を後者の場合は抗不安薬を少量使うと落ち着きます。
認知症患者に多彩な周辺症状が出ると精神科に紹介されますが、精神科医が認知症患者のBPSDに対して特別な対応策を持っているわけではありません。鎮静をかけるために多量な向精神薬を投与するだけです。患者の尊厳のことを考えれば、精神科受診はなるべく避けるべきでしょう。
糖尿病性認知症―低血糖
最近糖尿病患者に認知症がよく合併することがわかってきました。私の経験では、低血糖による脳障害あるいは脳血管性認知症が大部分です。アルツハイマー型と違って、元気な印象や取り繕いなどのわざとらしい症状はなく、うつ状態で活気を失い、食事、入浴、排泄行為が徐々に障害され、進行すると日常生活すべてに介助を要するようになります。
実際低血糖発作を繰り返すたびに、認知症の発症頻度が上昇すると報告されています。治療中に、冷汗、動悸、震えなどを経験して、砂糖を舐めれば軽快しますが、低血糖発作は認知症のリスクファクターであることは知っておいてください。
糖尿病の新薬が出たこの1,2年で糖尿病性認知症をよく経験するようになりました。
昨年5月糖尿病治療の新しい血糖目標値が示されました。高齢者で何らかの精神的あるいは身体的障害があればHbA1cは8%未満を目標とするとされました。とんでもない高い値ですね。厳格な血糖コントロールをすると低血糖発作、転倒あるいは脳卒中が増え、糖尿病関連死が増加することがわかったからです。
糖尿病は以前信じられていたように、The lower、the betterではなく、高齢者ではThe lower、the worseの場合があります。健常を目指して頑張ると、逆に予後を悪くすることがある。年齢相応の治療目標が必要で、高齢者疾患は一筋縄では対応できない。ただ糖尿病性合併症を防ぐためにはHbA1Cを7%未満にすることが勧められています。可能であれば7%未満をめざし、血圧やnon-HDLのコントロールも厳格にすべきでしょう。
予防できる認知症であり、発症しないよう糖尿病治療を正しく受けてください。
加齢関連認知症―加齢現象は病気か?
大凡85歳以上の高齢者の方で物忘れが激しく人格も変わってしまう患者がいます。人物認識も障害され、昔「脳軟化」と呼ばれていた疾患に相当する認知症でないかと考えています。進行の程度は緩徐で、言語的コミュニケーションの一部が保持されていて、丁寧に診ると明らかにアルツハイマーとは違った臨床症状を示します。最終的には赤ちゃんになりますが。
多発するラクナ梗塞、脳動脈硬化そして脳代謝の機能低下など加齢によって生じるもろもろの異常が絡み合って引き起こされると私は考え、これを加齢関連認知症と呼んでアルツハイマーと区別しています。勿論診断の困難な嗜銀顆粒性認知症や神経原線維変化型認知症も少数含まれているでしょう。いずれも、ビタミン剤のように抗認知症薬が投与されていますが効果はありません。
超高齢者にアルツハイマーにみられる異常が脳で起これば、認知機能の障害は急速に悪化するでしょう。
なるべく集団での生活に親しむよう工夫をしてください。環境にうまく適応すればかなり長期間穏やかな老後が確保できます。
加齢現象を病気と間違わないよう。加齢を直せと迫られると、不老不死の薬を頼まれた仙人のように、効果のない妙薬?を処方して一件落着とされます。加齢による病気まがいな症状があることだけは知っておいてください。
終わりに
ここまで読んでくださった方は、色々耳に入っていた認知症に関する知識と違うことが書いてあって戸惑われたのではないでしょうか。かくのごとく高齢者医療は正しく論ずるレベルまで達していないのです。まだ道半ばです。80代、90代の患者が医療機関に溢れるようになったのは最近のことですからね。私がここで述べたことも、誰かが書き直すかもしれません。それでいいのです。
ただ新薬に飛びついたり、権威の話すことを根拠もなく信用しないよう心掛けてください。薬害まがいの疾患で苦しみ、その上誤診されて治療を受けなければならないことはよく起こっています。権威は忙しくて多くの患者を注意深く診る時間はありません。そのくせ自信たっぷりに高齢者疾患について解説するので、一線で働く私たちは眼を白黒させなければなりません。
4大学病院が、D降圧薬に心筋梗塞や脳梗塞を防ぐ効果があるとのねつ造データを報告しました。
高齢者疾患のエクスパートは、患者を一人でも多く診ているドクターです。私の敬愛する宇佐美一政先生率いる泰玄会病院や介護施設の優秀なスタッフを信頼してください。
穏やかな老後が送れるよう医療関係者だけではなく、皆様と力を合わせて考える時が来ています。医者に丸投げはよくない。夢物語ではなく、正しい情報を理解しておいてください。
高齢者疾患について一般の方にお話しするときはいつもこう言って締めくくっています。
高齢者の生き方
不老長寿を目指すのではなく、豊かな心で穏やかな老後を!感謝の気持ちを持ち、人に与える毎日を!医療に依存するのではなく工夫して健康な生活を!
今のだぶだぶの医療が孫の世代でも行われているとはとても思えません。

by rr4546 | 2014-03-31 16:38 | 医療関係 | Comments(0)