医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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高齢者医療、とくに認知症医療はまだ道半ば

齢者のcommon diseaseとして認知症、糖尿病、高血圧そして骨粗鬆症などがある。高齢患者は医療機関に押し寄せており、一般の方はこれらの疾患の診断や治療は確立されていると思われているであろう。ただ現在でも高齢者のcommon diseaseに関する診断基準や、従来行われていた治療の問題点がわが国や先進諸国から指摘されて、高齢者医療もどんどん洗練されている。
今回は認知症をとり上げ、認知症をどう理解し、私どもはどう付き合っていくべきかを考えてみたい。
認知症の権威がいっていることや、厚労省が目指している方向とは必ずしも同じではない。ただ実際数多くの認知症患者を診ているものの現場からの真面目な報告として、読んでいただきたい。
アルツハイマー型認知症―生活障害病
アルツハイマー型は記憶中枢である海馬を中心として内側側頭葉や帯状回後部の脳細胞が変性・死滅して起こる認知症で、体験したことをすっぽり忘れ、時間や場所を間違え、判断力が低下する。患者を診ていると、脳細胞が徐々に破壊されていく印象があり、βーアミロイド学説が提唱されているが、狂牛病にみられるプリオン蛋白のような異常蛋白が、アルツハイマー型認知症を発症させているのではないかとの印象を持つ。多くの神経変性疾患と同様、正確な発症機序はまだわかっていない。従って根治療法はない。家族の方には、進行性でガンと同じような脳の厄介な病気で最後は赤ちゃんになるとお話しする。
Alzheimer型認知症は物忘れの病気と思いがちであるが、普通の生活が送れないのが特徴で、私はこの認知症を生活障害病とよぶ。電話、食事の準備、お金の管理、事務処理に支障をきたし、仕事場や家庭はてんてこ舞いである。
治療薬は現在4剤あり、治療効果は桜・猫・電車を記憶できるとか、野菜の名前がどれだけスムースに言えるかなどで調べるが、いくら桜・猫・電車が言えるようになっても、生活障害は改善されない。認知機能の変化も100点満点のうちの3,4点の変化を有効と判定しているに過ぎない。
認知機能には記銘力、遅延再生、短期記憶、場所・時間の見当識、空間認知、判断力などがあるが、抗認知症薬がどの認知機能を改善させるかはっきりしていない。
服薬する場合は、副作用(副交感神経刺激症状、易怒性、歩行障害、頻尿、めまい、傾眠)や生活障害の改善への効果について主治医とよく話し合う必要がある。臨床の現場ではほとんど効果判定が行われないで、漫然と投与が行われている。
軽度の認知障害(MCI)の段階で4剤いずれを服用しても、副作用が認められるが、認知症発症に対する予防効果がないと報告されている。早期治療が難病克服の第一歩であるが、信頼のできる早期診断は現時点では確立されていない。従って早期診断・早期治療は耳触りがいい国家目標であるがAlzheimerに関しては現時点では絵に描いた餅である。
徘徊、弄便、昼夜逆転などの周辺症状(BPSD)は現在ほとんどコントロールできる。患者との信頼関係が基本であるが、身内は感情的になって虐待まがいなことこそすれ、信頼関係は築けないと腹をくくるほうがいい。介護関係の人たちの援助を受けるべきであろう。
それでも不穏、易怒性、声出し、物盗られ妄想が続けば、障害された脳の情報伝達系の異常か、残された正常の脳の異常反応のどちらかを見極めて、前者の場合は抗精神病薬を後者の場合は抗不安薬を少量使うと落ち着く。
厚労省のホームページにBPSDの対応ガイドラインが乗っているが、抗認知症薬の使用が勧められている。認知症患者はほとんどの症例でAlzheimerだけに適応がある抗認知症薬が投与されている。それでBPSDが出て困っているのに・・・・。
BPSDに定型的あるいは非定型的抗精神病薬を投与すると死亡率が上昇するとアメリカから報告された。しかし日本での臨床研究ではむしろ寿命が延びたとの成績が得られているらしい。
認知症患者に多彩な周辺症状が出ると精神科に紹介される。精神科医が認知症患者のBPSDに対して特別な対応策を持っているわけではない。鎮静をかけるために多量な向精神薬を投与するだけである。患者の尊厳のことを考えれば、精神科受診はなるべく避けるべきである。
糖尿病性認知症―低血糖
最近糖尿病患者に認知症がよく合併することがわかってきた。私の経験では、低血糖による脳障害あるいは脳血管性認知症が大部分である。アルツハイマー型と違って、元気な印象や取り繕いなどのわざとらしい症状はなく、うつ状態で活気を失い、食事、入浴、排泄行為が徐々に障害され、進行すると日常生活すべてに介助を要するようになる。
実際低血糖発作を繰り返すたびに、認知症の発症頻度が上昇すると報告されている。治療中に、冷汗、動悸、震えなどを経験して、砂糖を舐めれば軽快するが、低血糖発作は認知症のリスクファクターであることを知っておくべきである。
糖尿病の新薬が出たこの1,2年で糖尿病性認知症をよく経験するようになった。
昨年5月糖尿病治療の新しい血糖目標値が示された。高齢者で何らかの精神的あるいは身体的障害があればHbA1cは8%未満を目標とするとされた。厳格な血糖コントロールをすると低血糖発作、転倒あるいは脳卒中が増え、糖尿病関連死が増加することがわかったからである。糖尿病は以前信じられていたように、The lower、the betterではなく、高齢者ではThe lower、the worseの場合がある。健常を目指して頑張ると、逆に予後を悪くすることがある。年齢相応の治療目標が必要である。高齢者疾患は一筋縄では対応できない。ただ糖尿病性合併症を防ぐためにはHbA1Cを7%未満にすることが勧められている。可能であれば7%未満をめざし、血圧やnon-HDLのコントロールも厳格にするべきである。
予防できる認知症であり、発症しないよう糖尿病治療を正しく受けるべきであろう。
加齢関連認知症―加齢現象は病気か?
大凡80~85歳以上の高齢者の方で物忘れが激しく人格も変わってしまう患者がいる。人物認識も障害され、昔「脳軟化」と呼ばれていた疾患に相当する認知症でないかと考えている。進行の程度や言語的コミュニケーションの一部が保持されていて、丁寧に診ると明らかにアルツハイマーとは違った臨床症状を示す。最終的には赤ちゃんになるが。
多発するラクナ梗塞、脳動脈硬化そして脳代謝の機能低下など加齢によって生じるもろもろの異常が絡み合って引き起こされると私は考え、これを加齢関連認知症と呼んでアルツハイマーと区別している。勿論診断の困難な超高齢者にみられる嗜銀顆粒性認知症や神経原線維変化型老年認知症も少なからず含まれているであろう。どれもビタミン剤のように抗認知症薬が投与されるが効果はない。
ただ多くはアルツハイマー型との混合タイプと診断され、抗認知症薬が投与されている。超高齢者にアルツハイマーにみられる異常が脳で起これば、認知機能の障害は急速に悪化するであろう。
なるべく集団での生活に親しむよう工夫する。環境にうまく適応すればかなり長期間穏やかな老後が確保できる。
加齢現象を病気と間違わないよう。加齢を直せと迫られると、不老不死の薬を頼まれた仙人のように、効果のない妙薬?を処方して一件落着とされる。歳が来れば、医療に頼らないで、穏やかな死を迎えたい。
ただ先日、菩提寺で「糖尿病の話し」をした際、あとの懇話会で「先生、ここが悪いといって、医療機関を受診して、加齢です」と言われたら身も蓋もないと訴えられた。もっともな話で、私も何か訴えられれば「ここが悪いでしょう。この薬を飲んでください」といいますねと笑ってしまった。ただ加齢による病気まがいな症状があることだけは知っておきたい。100歳でも元気な人がいれば、70歳過ぎて老年症候群まがいのよぼよぼの人もおり加齢は個人差が大きいことも知っておくべきであろう。

by rr4546 | 2014-01-09 11:50 | 医療関係 | Comments(0)