医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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よき高齢者医療を目指してNo.19 高齢者糖尿病治療 新薬の価値? 

糖尿病治療は一律に行うのではなく、個々の患者に応じた対応が求められる。特に高齢者はHbA1cを下げることだけを目標とすると、血液データ上ではgood controlであっても、脳卒中発作の頻度や死亡率をあげるとの臨床研究があることを紹介してきた。
ここでは糖尿病治療の基本である食事療法・運動療法そして色々メリットのあるインスリン注射療法について詳述するつもりはない。権威たちの書いた治療書を参照されたい。
ただ権威が推奨することでそれはちょっと可笑しいのではないか、一般の高齢者も知っておかれた方がいいと思う2点について書いておきたい。
一つは従来の治療薬に見られる肥満や低血糖などの副作用がないと鳴り物入りで臨床に登場し、1、2年間で糖尿病患者の7割以上に処方されるようになっているインクレチン関連薬(特にDPP-4阻害薬、以下インクレチン関連薬)に関してである。
もう一つは欧米では糖尿病治療のfirst choiceで推奨されるビグアナイド薬についてである。機会あるごとに高齢者でも、腎機能低下や350mg/dl以上の高血糖あるいは脱水や急性アルコール中毒のようなアシドーシスを来たしやすい状況がなければ、安心して使えると話しているが「怖くて使えない」という反応が返ってくる。
専門家の多くも日本人の糖尿病はインスリン分泌が低下して起こるので、インスリンを分泌させる薬を選択するべきである。インスリン分泌に影響がないビグアナイドは余り適応がない。むしろ致死的な乳酸アシドーシスを起こすので注意をするよう主張している。適応があるとすれば肥満の壮年期の患者に限ると今でも治療学の本に書いてあると思う。それが高齢者には低血糖の心配がないので安心して使えるという話である。
先ずインクレチン関連薬についてである。インクレチン関連薬はインスリン分泌ホルモン、インクレチンの分解を阻害して血糖をコントロールする薬である。インクレチンは食事の際に消化管から分泌されるので、無理やり血糖を下げる従来の薬と違って血糖変動を生理的に改善する。好都合なことにグルカゴンの分泌を抑制するので、従来の薬に見られる体重増加がない。あとは老化防止に有効であるなど仮説だらけの夢物語を聞かされた。ともあれいいことづくめで私も煽られてビグアナイドが使いにくい患者に処方している。
ただよいしょの講演会の際に糖尿病で困るのは血管系の合併症、その合併症に対してよい効果が得られるのかと質問をしたが、いつも無視された。演者も催眠術にあったように、この新薬は画期的な有用な薬であると信じて疑わないので、場違いな質問を不愉快に感じられたのであろう。
驚いたことに、私が危惧していたように、インクレチン関連薬を投与しても、従来の治療と比較して複合心血管イベント、心血管死、全死亡すべてで改善が見られなかったとの報告がなされた(EXAMINE試験、SAVOR-TIMI53試験)。勿論HbA1cは改善するが。その上困ったことにサキサグリプチン(インクレチン関連薬)群では心不全による入院例が増加した(山田悟 DPP-4阻害薬の夢、破れる?  MT Pro 9月19日)。
デイオパンが脳梗塞や心筋梗塞を有意に減少させたとの複数の医療機関から出た報告とまるで違う。うっかりわが国でこのような臨床試験が行われないでよかった。悲しい言いかたであるが。症例を絞ればインクレチン薬の有用性が証明できたとの報告も出るかもしれない。
煽りたてられてインクレチン関連薬を処方した医師はこの結果を患者にどのように説明するのであろうか。
インクレチン関連薬投与で膵炎の頻度が上昇した、膵細胞の過形成がより多く認められたとの報告もある。
多分この結果は患者に説明されずに、インクレチン関連薬は投与され続けるであろう。そして患者は医療費が増えたが、新しい薬を服用しているので安心だと信じて治療を受け続けるであろう。だれが裏で笑っているのか、考えただけでも恐ろしい。
インクレチン関連薬の有用性の講演をした医師は、自腹を切ってでも、インクレチン服用で何もいいことがなかったとの報告がある、実は勧めたが臨床的メリットはあるかないかを知らないで、煽ったのは申し訳ないくらいの講演会を開くべきであろう。
健保組合も、臨床的メリットが特にない可能性のある薬に莫大な負担を強いられたと異議申し立てをするべきであろう。
インクレチン関連薬とSU薬の併用によって、糖尿病性認知症もどきの患者が増加していることに警鐘を鳴らそうと思って書きだした。折しも糖尿病には認知症が合併するとのマスコミキャンペーンがある。自分の治療で認知症もどきの患者を作り出し、自分の手落ちだと詫びずに糖尿病のせいにする。医療者側の自己保身のような状況、認知症と同じような異様な状況が糖尿病治療現場でも生まれると思う。嗚呼!
インクレチン関連薬とSU薬の併用の問題点について次回書く。いくらでも代替療法がある。

by rr4546 | 2013-10-10 18:11 | 医療関係 | Comments(0)