医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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よき高齢者医療を目指してNo13  高齢者糖尿病治療 補遺 ダウン症と抗認知症薬そしてねつ造事件

高齢者の糖尿病は過剰な摂取カロリーにより高血糖を来たす場合と、インスリン分泌が低下したり、肥満などでインスリンの働きが悪くなったりするインスリン抵抗性増大によるタイプの2型糖尿病が大部分である。2型糖尿病は、摂取カロリーの制限が原則で、それでも血糖がcontrolできなければ糖吸収阻害薬、インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗改善薬、糖産生抑制薬、時にインスリンを使って治療をおこなう。
摂取カロリーの制限と言葉でいえば簡単であるが、高齢者が指示されたダイエットを守ることは至難である。これは糖尿病患者に限ったことではない。私自身も脂質異常症と高血圧治療を教え子のおしどりDrsに受けているが、孫を誘って鉄板ステーキに行けば、ヒレではなくサーロインを脂肪は多幸感をもたらすと追加するし、麺類好きでいくら連れ合いにたしなめられても、ダシの効いた汁は最後まで飲み干す。意志の強い、しかも健康だけが至上命題の人生観の持ち主以外は、食べたいものを食べ、飲みたいものを飲む生活を送っているであろう。それでいいではないか。その上糖尿病患者は糖がうまく利用できないために、空腹感が強く、高カロリーのものにやたらと手を出す。その上糖によって上げられた高浸透圧のおかげで、水分も驚くほど欲しがる。一度糖尿病に侵されれば、どれほど意志の強い人や、教養のある人でも、盗み食いのようなはしたない振る舞いに及ぶことも稀ではないと言われている。糖尿病の基本である食事療法は周りの者の協力のもとで計画的に行わなければ実施できない。自分が食べたいものを食べているのに、患者にだけ、あれを食べるな、これはだめなど言うのは理不尽であろう。
ただ、いつか語るが、肺癌などの癌を惹き起す喫煙をたしなみ、だし汁を飲みほすわたしのようなものが、肺癌や高血圧治療を受けるときは、医療費負担に何らかのpenaltyを科されても文句を言うべきではない。このことについては日を改めて語る。自分のまいた種は、自分で刈らねばならない。当り前であろう。好き勝手に人生を送ったものに対して、必要以上に寛容になることは不公平である。
寄り道をしたが、ご飯を減らしたと言いながら、お饅頭を一つで止めておけばいいのに、病気のせいで、二つ三つを食べてしまう。ちょっと昨日、食べすぎたので検査データは悪いと思いますと頭を掻きながら外来に来られる高齢者は多い。翌日反省して突然ご飯を減らして、通常通りの糖尿病治療薬を服用して、低血糖発作をおこす。これが高齢者糖尿病治療現場であろう。私の経験からも。
高齢者は摂取カロリーの制限と服薬習慣が乱れているということを念頭に置いて治療方針を決めねばならない。高齢者糖尿病治療は専門医が他人事のように目標値を決めて、治療を行っているが一筋縄でいかないというのが小生の感想である。だから認知症のように薬物治療に頼るなと言えないほど、血糖を確実に下げる薬は多い。使いこなして重篤な合併症を防がなければならない。
また寄り道をするがアリセプトがダウン症患者の生活行動の低下を改善させるかどうかの治験が始まるとの新聞報道を見た。ついにHuman health careを社是とする製薬会社が「頭良くする薬」の市場に乗り出そうということであろう。Pilot studyで効果があるとの成績が得られたので、多施設で行うとのこと。
アルツハイマー患者のアリセプトの認知機能障害改善効果について名郷先生はじめ私の親しい精神科医や神経内科医も首を傾げている。障害されたADLもほとんど改善しない。脳中のアセチルコリンが増えると、何かわざとらしい多弁さや高揚感に溢れた行動が一時的に見られる。時に易怒性や介護拒否が出現することは繰り返し指摘している。副作用を見ているのであろう。無理やり増えたアセチルコリンのお蔭で、消化管が過剰に動き過ぎて下痢するように。先天的に知能が障害されー彼らの無垢さにかっては悲嘆にくれた家族もダウン症患者と共に生きていく希望を持つーADLも人並みでない患児の何を治療目標にして、脳中のアセチルコリンを増やそうというのであろうか。また主治医だけが効果がある、効果があると言いだすであろう。認知症に効果ありとの民間療法はあまたある。使った主治医は処方した時から、効くはずだと思い込み、そういう薬は身内だけが、効く効くとはしゃいでいる。嗚呼。
それにしても、結果が出ない前から悲観的なことを言うのはフェアーでないが、このようなprojectは、認知症専門医が抗認知症薬が効く効くと、はやし立て、ダウン症を見ている真面目な先生が、そんなに効く薬ならダウン症に見られる末期の認知症にも効くに違いないと早合点して組まれたとしか思えない。認知症専門医の罪は深い。しかしこのprojectは製薬会社がダウン症にアリセプトの適応を広げようと真面目に思っているのではなくー適応患者の数が少なすぎるー、ダウン症にも効く薬ですから、高齢者に認知障害が見られたらすぐ処方しなさいとの強力なメッセージを臨床の現場に送るために仕組まれた芝居だと思う。この記事を読んで、アリセプトを処方したDrは多いに違いない。素人の方は医師がこの新聞記事で、自分の治療方針を決めることなどあり得ないと思われるであろうが、理解しないで製薬会社のMRに手玉に取られて、医療に励んでいる医師は意外に多いのである。
ディオパンという降圧剤が、降圧だけでなく、脳梗塞も心筋梗塞の発症頻度も下げるというのもどうやら製薬会社のデータ操作の結果だったらしい。製薬会社の示したデータにねつ造がある可能性を指摘したのは、私の出た京大病院の若い循環器の医師であった。彼の正義感がなければ、ねつ造されたデータは、明らかにされることはなかった。高血圧のお偉方も、ディオパンの臓器保護作用について、ねつ造論文をよりどころにして、お墨付きを与えていた。医師を手玉に取ることなど製薬会社にとっては実にたやすい。恐ろしいことである。
10年間にわたって、1兆円以上儲けたアリセプトを開発した製薬会社は、その後何一つ新薬を開発しなかった。隠れてジェネリック医薬品つくりに励んでいる。いまでもアリセプトに頼って生きていくしかないのである。今回の記事は製薬会社の悪あがきをあからさまにしただけであろう。ジャーナリストT君よ、医療マフィアに耳打ちされた話題に耳を傾けるなといったではないか。医療界は君が信じるような、病んだ人を救おうというロジックで動いている美しい世界ではないのだ。T君、ねつ造したデータがどうして作られたのか、そのデータをもとにして学会のお偉方や当事者の大学は当初どのように対応したのか、臨床の現場でねつ造されたデータがなぜこれほどまでに容易に受け入れられたのか(論文を見てねつ造の可能性があると読み取った若い医師がいた)、どうしてねつ造されたデータが明らかにされたのか、取材してみたまえ。君が想像している医療界と別な面の医療界をみるであろう。こういう報道こそ、よりよい医療構築に貢献するであろう。正しい道に励んでもらいたい。
この項は高齢者糖尿病治療の治療目標について、拙著「症例から学ぶ高齢者疾患の特徴とその対応」に充分触れなかったことに対して忸怩たる思いがあり、どうしても書かねばならない。それにしても1000部余りの拙著が2年たってもさばけない。以前上梓した本は医学本としてはあまりない15、000部が売れたのだけれど。高齢者医療の手引書がなくても、臨床の現場では適切な高齢者医療が行われているのであろう。大学で長く教え、国立病院の院長を務め、私の腎臓疾患の見方や治療の手ほどきをして下さった私の尊敬するT先生は、今年の年賀状に「折にふれ先生の御高著を開き反省しております」と書いてくださった。改定できる機会が与えられれば思い残すことはもう何もない。幸い、先日主治医から硬膜下血腫は完全に治癒したと言われた。友人はプールのような狭いところで泳ぐから、そういう羽目に陥るのだと忠告してくれるが、京都市内から気楽に行ける海はない。残されているのは働くことか。嗚呼。
この程度の治療をしていては高齢者に失礼だ、などの手厳しい批判でもいい。程度が低すぎてコメントするのも憚れるでもいい。無視されては私の立場では何もすることがない。勿論書き直すべき点はあるが。
本年5月に糖尿病学会がリリースした「血糖コントロール目標」に触れながら続きを書く。次回

by rr4546 | 2013-07-12 12:47 | 医療関係 | Comments(0)