医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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よき高齢者医療のために  補遺 名郷直樹先生 「認知症治療薬の微妙な効果」  

いい歳をしてスポーツクラブで体力作りに励んでいたら、プールの壁に数回頭を打ち付け、硬膜下血腫を作ってしまった。頭の手術を1月12日受けて、2月6日経過をみるために再検査をしたところ、血腫が残っているという。再手術もありだと、若い主治医の説明を聞いて心穏やかでなかった。今まで大病を患わないでやってこられたのだから、今回の入院や、爆弾を抱えたまましばらく生活をしなければならないことくらいは致し方ないと自分を慰めている。ただ頭の中の血腫のCT画像がちらちらと浮かび、立派に死にたいなどと家人に日ごろ言っていたことなど忘れて、毎日おどおどと生活している、情けない。書き進めている「よき高齢者医療のために」を書くほど集中できない。今回はDotoDoという医師向けの情報雑誌に名郷直樹先生が書かれた短い総説論文「認知症の治療薬の微妙な効果」を紹介して、自分の頭のリハビリを図っておきたい。
それにしても、わたしの周りの認知症治療現場は以前より一層荒廃してきた。昨年4種類の認知症進行遅延薬が発売されたのを機に、薬屋が治療薬紹介の講演会を度々開いたせいであろう。アルツハイマー型認知症の進行遅延だけに効果がある薬が、鬱、加齢関連認知障害、慢性アルコール脳障害、糖尿病性認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症、日常生活すべてに介助を要する重度の認知症、いや物忘れを訴える超高齢者そして詐病(認知症ノイローゼ)に、認知機能を改善させることまで期待して、進行遅延薬が時に複数処方されるようになった。嗚呼。アセチルコリン阻害薬はよくBPSD(周辺症状)と紛らわしい、不穏、介護拒否、暴力、昼夜逆転などの症状を招来する。BPSDがでると、1,2年前は、精神科送りが当たり前であった。認知症診断にも、認知症介護にもほとんど関わらない精神科医が、認知症をみると、向精神薬ばかりを投与して、時に廃人のような人間を作り出す。認知症治療に精神科医は関わるべきではない。実際アメリカのFDAは認知症患者に向精神薬を投与すると、生命予後が短縮するので、認知症への向精神薬投与に対して注意勧告を出している。しかし精神科に紹介すれば、向精神薬が処方されるのは当たり前である。それが彼らの仕事だから。
しかし驚いたことに、最近は認知症進行遅延薬の投与を受けている患者の多くに、セロクエール、リスペリドンあるいはコントミンが併用されていることが多くなった。これ等の向精神薬には抗コリン作用があって認知障害を増悪させる可能性がある。しかし向精神薬を使うと、患者が穏やかになって家族が喜ばれるので、認知症治療に評判がいい先生ほど、向精神病薬の併用を行っている。精神科医の処方がいつも型通りで、以前は精神科医に紹介していたが、内科医も自分でもできると処方を始めたのであろう。1,2年前はBPSDを取るために止むおう得ず処方した向精神薬をしばらく投与するよう主治医に情報を提供すると、そんな薬は聞いたことも、使ったこともないと精神科に回されていたときと様変わりである。現在、認知症治療はやりたい放題である。認知症進行遅延薬で進行を抑え、向精神薬で障害を増悪させる、認知症患者の頭の中は大変であろう。これから医師になる若者は、わたしたちが理解している認知症とは違った病態を認知症と理解するようになるかもしれない。
認知症医療が今のままでよいのだろうかといつも心を痛めている。幸運なことに病気をしたおかげで、今回紹介する名郷直樹先生の「認知症の治療薬の微妙な効果」という論文に出合った。先生は進行遅延薬の効果があったとの6本の国際的規模の臨床試験を統合したメタ分析を検討して、「認知症進行遅延薬の臨床効果ははなはだ怪しい、少なくともはっきりしない」と結論付けられた。わたしの臨床観察からも納得できるご主張である。4種類の認知症進行遅延薬の使い分けや、認知障害の改善にも効果があるとの講演会をしておられる、認知症研究の権威たちがどのように名郷先生の論文に反論されるか心から待っている。アセチルコリンを増やしても、NMAD受容体を阻害しても、死んでいく脳細胞を生き返させたり、若がえさせたりすることはできない。そのような効果があれば、認知症は、現在克服されているであろう。名郷先生に直接ご許可を頂き、先生の論文をここに転載する。それにしても今の認知症治療は可笑しい。

「認知症の治療薬の微妙な効果―脳代謝賦活剤の事件を思い出しながらー」
名郷直樹

脳代謝賦活剤の効果
認知症治療で思い出したこと
もう15年くらい前のことだ。脳代謝賦活剤という薬が、脳梗塞の後遺症の改善に使われていた。それらの薬の大部分が市販後の臨床試験の結果、効果が認められず続々と発売中止された事件があった。
こうした薬の最初のものは「ホパテ」という薬だ。この薬が許可された後、後続薬はすべてこのホパテを対象薬として効果が検討され、同様な効果があるということで保険薬として認可されていった。しかし、最初のホパテの評価があやしく効果は不明確で、重症の肝障害等の副作用のほうが問題であることがわかったのである。
そういう流れの中で、ちょうどそのころ、端から脳代謝賦活剤の効果に懐疑的であった私は、同僚の診療所医師とネットワークを組み、「脳代謝賦活剤を止めても変わらないだろう」研究にかかわった。
一般にはWith Trialという研究方法で、脳代謝賦活剤をすでに服用している人を対象に、服用を続けるグループと中止するグループをランダムに割りつけ、変化があるかどうかを見る研究である。参加した診療所が、すでに脳代謝賦活剤をあまり使わない施設であったこともあり、なかなか患者が集まらず十分な研究規模を確保できず、明確な根拠を示すことはできなかった。

明らかになった事実
国もメーカーもなんの責任もとらず
すると、このあと驚くべきことが起きる。メーカー自身がプラセボ対象のランダム化比較試験を実施し、自ら効果を検証したのである。すると多くの臨床医の予想どおり、効果がプラセボと変わらないことが示された。この研究により、脳代謝賦活剤の発売中止が相次いだ。
今から思えば、良いのか悪いのかわからない事件である。国からの指導とメーカー主導で、こうした検討が行われたことは特筆に値する。しかし、その結果が出たあとの処理を考えると、逆に本当にひどい事件だったように思う。効果のない薬が保険薬として大量に使われ、それを一旦認めた国は何の責任もとっていないからである。後者を考えると、一度認められた治療ならその後無効と判明しても、メーカーにせよ国にせよあとから誰も責任を取ることはないと明らかになったということだろうか。
今回、認知症の薬をとり上げるにあたって脳代謝賦活剤と同様の疑いがあり、それが質の高い臨床試験の結果により示されている状況を明確にしておきたい。認知症の治療薬として、最初に発売された「ドネペジル」の臨床試験はプラセボを対象として行われた。有効かどうかわからない従来薬と同等というような、いい加減な臨床試験でないことは確かだ。しかし、そのプラセボ対象のランダム化比較試験が本当のところどうなのか、少し詳しく見てみよう。

今回の論文
認知症の薬物治療の臨床試験
このドネペジルについてはコクランレビュー1)で検討されている。ドネペジル10mg/日の投与と、プラセボと比較した6つの臨床試験を統合したメタ分析の結果,12週後のMini―Mental State Examination(MMSE)―長谷川式に相当するもの(寮注)ーの点数の違いで見ると、ドネペジル群で1.26点、点数の減り具合が少ないという結果である。
MMSEは30点満点の指標なので、15点と16点の差くらいの効果ということになる。95%信頼区間は0.90~1.62と記載されている(資料寮略)。
両群で600人程度の研究規模であるが、点数の差の検定であれば、このような小さな差でも統計学的な優位差が検出される。ここが脳卒中のような発症あり/なし、というアウトカムの評価とは、異なるところである。

試験結果の捉え方
統計学的有効性と臨床的有効性
たとえば30点満点のテストで1.26点というような差が、たとえ統計学的に有意だとされても、それが臨床的に有効かどうかを同時に保証しているわけではない。研究規模を大きくしていけば、原理的にはどんな小さな差でも統計学的に有意差ありと言える。
さらに、認知症を評価した際に使っている点数の変化を比較するというようなときには、かすかな点数の差を統計学的に有意というにも何千という大規模の研究を行わなくても良い。実際の研究も数百人規模でなされている。
ここには、脳代謝賦活剤を有効と認めたときとは違うものの、やはり臨床的な有効性を無視して、単に統計学的な差が出ればよいというような背景がある。
しかし、臨床的な立場からそのような考え方を支持することはできない。研究開始時点で1点の差を有意と言える規模で行ったとあれば、1点の差を臨床的にも有効だと考えるような状況が必要である。だが、1点の差を臨床的に意味があると言う医療者がどれほどいるだろうか。さらにはそういう患者が、患者家族がどれほどいるだろうか。ほとんどいないのではないだろうか。

「有意差」の持つ意味
臨床的な効果ははなはだ怪しい
統計学的には効果があっても、臨床的に効果があるかどうかわからない。認知症の治療薬は、そのレベルの薬だと思う。そういう意味で、やはりまた脳代謝賦活剤を思い出す。
認知症の治療薬もまた、脳代謝賦活剤と同じではないか。違いはプラセボ対象のランダム化比較試験とそのメタ分析で統計学的な有意差が出ていると言うところだけで、臨床的な効果ははなはだ怪しい。少なくともはっきりしないという点では、かっての事件と大した差がないように思える。(名郷直樹Do to Do Vol 7:12~13,2013)
この論文をBLOGに転載させていただくために名郷直樹先生、この論文に関わった編集者に深くお世話になった。記して感謝の意をささげます。

この論文を読んでいると、名郷直樹先生は患者をよくする医療だけに誠実に取り組む根っからの臨床医だということがよくわかる。研究中心で名を売ろうとか、薬屋の謝礼金目当てなど全く眼中にない。認知症進行遅延薬の効果を、臨床的有効性から、統計学的手法の問題点も含めて論じたのは名郷先生が初めてでないだろうか。彼の結論は、多くの認知症を見ている私の臨床観察と一致する。認知症患者を持つ家族の方の抱いている印象とも同じではないか。進行が遅れると言われて必死の思いで服用させているので、効果があると思いこまれているいる方は多いが。認知症の権威たちは、副作用?を短期間の認知症障害の改善効果と誤解しているのではないか、権威たちは数年にわたって進行していく認知障害を進行遅延薬が遅延させるという臨床経験なしで、認知症進行遅延薬の効用を強調しているのではないか、実地医家は薬屋の言われるままに、進行遅延を治療目標として患者を診ているが、何一つその効果を客観的に評価しないで、漫然と投薬を続けているのではないかという日頃抱いている疑問に答える論文に出合えて、現在の認知症治療が詐欺まがいの宣伝をする薬屋主導で行われていることがよくわかった。権威たちからこのような疑問が出されなかった背景を考えると、何か暗い気持ちにさせられた。再手術を受けねばならないかもしれないが、名郷先生の論文を読む機会が持てて、日ごろ疑問に思っていたことに対して、一つ答えがえられたことでその不運をチャラとしなければならない。認知症研究に携わる医療従事者よー画期的成果は何一つ見せてもらっていない!早期診断ができるなどとほら話は聞かされているが・・・ー、認知症対策に取り組んでいる振りをしている行政の役人よ、認知症患者じっくりと見たことがなければ薬を処方したこともないで、報道に携わる報道関係者よ、認知症を主人公とする物語を描く脚本家よ、真面目に取り組むしか、認知症と戦う道はないのだ。
名郷直樹先生のご業績の一部を知りたい方はAmazonで検索を。10冊以上のご本を上梓されている。次回も、リハビリを兼ねて、認知症進行遅延薬が製薬会社の宣伝しているように認知症の治療に本当に有効かどうかについて、かれらのデータをもとに考えてみたい。臨床的な改善を示す臨床の現場で使われているマーカーを使わないで、実地医家がほとんど使わない検査のマーカーの微妙な動きを根拠に、有効であると主張している。

Commented at 2014-02-06 12:58 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2014-02-06 12:59 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by rr4546 at 2014-02-09 03:10
最近メマリーには全く効果がなくて、VitEの方が軽度から中程度の患者に認知障害遅延効果があったとの報告がありました。認知症の治療のレベルは現在この程度です。認知症の専門家は軽度をデイケアで、入所患者で重度をどの認知症専門家よりも多く診ている老健の医師だと思います。是非先生の方からも感じたことをどんどん発信してください。認知症対策に厚労省も老健の医師の経験と知恵をなぜ活用しないのでしょうか。認知症の権威もマスコミも真面目ではないですね。よりよい認知症対策を作り上げるのは急務だと思います。
Commented by rr4546 at 2014-02-14 21:23 x
投与している臨床医も、効果判定をしていない。わが国独自の効果判定を作って、もう一度薬効を調べるべきだと思います。いや効いていると思っていない。家族だけがすがるような気持ちで薬に期待しています。このような異様な事態を招いたのは、医療マフィヤに操られている医療現場を知らないマスコミの責任だと思います。
Commented by 匿名希望 at 2014-03-10 16:05 x
エーザイからアリセプトの宣材を取り寄せました。
何かおかしいパンフレットです。

薬効で患者だけのHRS-Rスコアの推移の表を示していますが、
新規投与群では、やや効いています。しかしながら継続投与群では、
効いていません。対象の偽薬群が示されていないので、本当に有効かどうかすら不明です。
アリセプトの能書には、投与群と偽薬群の有効~無効の実際の数字が載っていますが、アリセプト投与群と偽薬群の数字の違いはわずかです。それでも、対象を広げると、有意差検定で効果はありということになるんでしょうか?

さらに急死例、古いエーザイの文献では、アリセプト投与例で25名急死、偽薬例で8名急死とありますが、現在の宣材では、原因不明の死亡率は0,1%未満、別の宣材では、0,05%と記載され、以前の1~3%の急死率と大きな違いがあります。

これらの疑問に対し、エーザイから人を送るように依頼しましたが、
田舎のプロパーには、何も説明はできないでしょう。
Commented at 2014-03-13 15:03 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2014-03-13 15:04 x
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by rr4546 | 2013-02-08 16:04 | 医療関係 | Comments(7)