医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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アルツハイマー病国際会議 No23 コウノメソッド No5 コウノ認知症治療学への疑問 No1その前に

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根治が期待できる治療方法がない現時点では、保険診療上認められている4種類の認知症薬を使い分けることが認知症専門医のいう認知症医療、治療ということであろう。それ以外認知症に関して治療と呼ぶ医療があるとは思われない。認知症医療と呼べる対応が現在のところないというのが筆者の立場である。

認知症医療の主役である認知症薬は進行を遅らせる効果がうたわれている。進行を遅らせる効果があるとすれば、認知症の特徴である脳の神経細胞の変性・死滅の増大を抑えることが示されなければならない。しかし残念ながら、グルタミンソーダの過剰な刺激が脳の神経細胞を傷害しているという仮説で作られたメマリーでも初期のAlzheimer型認知症(AD)では全く臨床効果が認められなかった、この成績から演繹すれば、メマリーも脳の神経細胞の変性・死滅に影響しないと考える他ない。他の3種類の認知症薬は神経伝達物質のアセチルコリンを上昇させて脳の神経細胞の働きを刺激するだけなので、神経細胞の変性・死滅には全く関係がない。

では何を根拠に進行を遅らせると信じられて認知症薬が投与されているのであろうか。軽度から中程度のADでは、記憶・言語および行為に関する認知機能下位尺度(単語再生、口頭言語能力、言語の聴覚的理解、自発話における喚語困難、口頭命令への反応、手指および物品呼称、構成行為、観念運動、見当識、単語再認、テスト教示の再生能力)の11課題と気分状態や行動変化に関する非認知機能下位尺度(涙もろさ、抑うつ気分、集中力の欠如、検査に対する協力度、妄想、幻覚、徘徊、多動、振戦、食欲の更新/減少)の10項目を70点満点で評価するADAS-J cog.で検査をすると、認知症薬の6か月間投与群で、偽薬の群に比べるとわずか(70点のうち数点。その上どの下位項目で悪化が偽薬と差があったかの記載がない場合が多い)に障害の程度が軽かったという成績を根拠にして、認知症の特効薬としてAD患者に投与されているのである。重度の場合はSIBという別の評価が行われている。

認知症薬の有効性を示すADASの詳細を理解して認知症薬を使っている実地医家はいてもほんのわずかであろう。薬屋のセールスマンまがいの認知症専門医の講演やMRから説明されて、中身を理解しないまま、わかった気になって薬をもてあそんでいる医師が多いと思う。本間昭他:老年期痴呆の臨床評価法-変化に関する全体的評価とサイコメトリックステストー 。老年精神医学雑誌 10193227,1999を認知症薬の処方を出す前に、ぜひ読んで、認知症薬の薬効を理解して患者に投与するべきである。何も理解しないまま、がばがばと認知症薬を投与しているのではないかと危惧している。薬の副作用で認知症現場を一層複雑にしている。

実際今でも認知症薬がいかに効くかという話があちらこちらで披露されている。身近な事から挙げれば325日にN医師会の主催した洛西境谷会館で行われた「認知症と介護ケアを考える会」の特別講演で某精神病院のM医師は、ガランタミンはアセチルコリンを上げる薬の中で多彩な作用を持っているので大変良い薬だと熱弁をふるっていかれた。最後に印象深く著効を呈した症例としてガランタミンを投与したところ、カラオケバーから先生元気になったという電話をもらったとのAD症例を紹介された。50人?近くのー今でもこういう講演会に忙しい開業医が集まるのだから恐ろしいー実地医家が熱心に参加している会で、投与後不穏などの精神症状で困った症例はないか、効果をどのように評価しているのか、薬の効果を実際実感される症例の割合はどれくらいか、などを質問しようとしたが、このような会で演者に冷や水をかけるような振る舞いをすると、聴衆たちを白けさせるので、急いで席を立った。受付で世話を焼いているMRの責任者と思しき担当者に、今でもこんな講演会をしていると、認知症薬は効果より副作用のほうが多いということが周知された時、君たちも責任を問われるぞと嫌味を言って会場を後にした。

また先日の朝日新聞でアリセプトの開発者で、工業高校卒の元エーザイの社員で今では大学教授―寄付講座といってエーザイが資金を出して作った講座の教授ではあるがーのかっても聞かされた「母親が自分のことを忘れてしまった」その悲しみが認知症薬の開発の原動力になったとの記事にお目にかかった。これも嘘である。人物認識が障害される前に、家事の段どりや、料理の手順がわからなくなって、家人を驚かせるのが一般的である。中程度も重度に近く進行した際に人物認識が障害されるので、家人は脳が壊れていくのをずーっと見ているので、息子を認識できなくなることにさほど驚くことはない。嘘ばかりをいった上に、認知症薬のおかげで、書けなかった字が、きれいに書けるようになったとの有名な医学雑誌の発表を引用していた。残念ながら原著を見つけることができなかった。内容は古くてまだ確認していない。ADは視空間認知機能が犯されて構成行為が異常となり、10時10分も正確に書けなくなる。認知症薬の投与で100例以上の認知層患者を診ている私の経験では一度書けなかった字がうまく書けるようになることはないと断言できる。レミニール服用中の中程度以上のステージのAD患者が、椿を描いた図を「寮隆吉のFACE BOOK」で見ていただきたい。

デイケア、短期入所そして長期入所の患者を見ていると、1,2年で軽度から重度のステージの認知症患者と接することができる。以前も言ったが老健施設は認知症を学ぶ最高の場所である。医師会に具申するが学びに来る真面目な医師は皆無である。

極め付きは42歳でADを発病して、13年たったが、その間100回くらいの講演活動を行い、現在では地区での認知症の社会の理解を深める活動をしているとの元看護婦のドキュメンタリーを挙げておく。いくら注意深く見ても、日常生活が障害されて初めて、認知症という病名が付けられる認知症を示唆する症状が見つからない。病識の欠如や取り繕いなど全くない。やたらと笑って家族と談笑しているので、多分抗うつ薬を服用していると感じただけである。ただ多くの人は若年性ADでも進行を遅らせる薬を飲めば、結構普通の生活が送れると誤解させたであろう。手の込んだ認知症薬の宣伝ドキュメンタリーである。認知症の権威がこのような誤診に知らぬ顔をしているのが信じられない。彼女は公共放送にたびたび出現するが、彼女をを使うディレクターは認知症のことを全く知らないか、何かよこしまな意図があって使っているかのどちらかであろう。製薬会社の意図を忖度し過ぎである。このようなアホなマスコミ人も医療現場を荒廃させている犯人の一人である。2例50歳前半で発症した若年性ADを経験しているが3年くらいで言語的コミュニケーションが全くできなくなって、あらため若年性ADの怖さを学んだ。勿論認知症薬は無効。当時製薬会社に問い合わせたが若年性ADには当社の薬は無効との返事であった。いつから若年性ADにも認知症薬が効くと考えられるようになったのか。

この延長線上に46歳で認知症を発症して「私は誰になっていくの?-アルツハイマー病者からみた世界」の著者で、発症後20年たった今でも元気な、この間多くの著作をあらわしたり、再婚したりしているクリスティーン・ボーデン氏が京都で公益社団法人「認知症の人と家族の会」主催で4月に行なわれる2017年世界アルツハイマー会議(2017ADIと略称されている)に招待される珍事を挙げておく。彼女は上記の本を著してから6回も日本を訪れているという。誰がどのような目的でスポンサーになって彼女の講演を依頼するのであろうか。彼女自身も当初の診断は間違っていて、前頭側頭型認知症で自分はアルツハイマーでなかったと告白している。

それなのなぜアルツハイマーの国際会議に、わざわざオーストラリアから彼女を呼ぶのであろうか。会議への参加料が数万円になるわけである。私は彼女が認知症ではなく初老期うつ病(正確な病名は精神科医でないのでわからない)であることをすでにこのBLOGで論じておいた。無関係な人を会議によぶほどお金の余った御仁がおられるのであろう。アホらしい。

このようなインチキがマスコミをにぎわすのでコウノメソッドの信者が全国に溢れるのであろう。

現時点ではAD患者を診たら、穏やかな生活を確保することに心を砕くことが、認知症に携わる医療関係者が最も心掛けなければならないことである。

そのために参考にするべきは、CIBICという臨床医が患者と介護者から得た情報で認知症薬の効果を評価する成績であろう。CIBICで認知症薬の効果をみると偽薬と効果に差がなかったという成績を以前にこのBLOGで紹介した。この成績を素直に評価しなければならない。専門医がみてもその効果が指摘できない薬を患者や家族が希望するとは思われない。患者は臨床的な改善を望んでいるのである。

CIBIC plusJはただ専門医の印象で評価しているのではない。衛生、着衣、排泄、接触、食事の用意、電話をかける、外へ出かける、金銭の取り扱いと通信、薬の服用、余暇と家事の評価、投与開始時、4週後のADLの総括とかなり詳細な状態の把握の方法である。さらに介護者から人が物を盗む、自分の家でない妄想、配偶者は偽物、見捨てられ、不義妄想、猜疑心、これら以外の妄想、幻視、幻聴、幻臭、幻触、またこれ以外の幻覚、徘徊、無目的な行動、不適切な行動、暴言、威嚇や暴力、不穏、昼夜逆転、悲哀、抑うつ、不安、一人ぼっちにされる不安などの認知症にみられる臨床症状の項目別の詳細な評価である(本間昭 同上論文)

この成績で有効性が示されなかったことをしっかり頭に入れて、副作用と効果を天秤にかけながら、認知症医療に取り組むしかない。

患者が何を望んで医療機関を尋ねるか謙虚に耳を傾けなければならない。患者は、臨床的な効果を期待している。ADASスコアーから見た悪化の程度が軽微になることなど、訳の分からぬことなど望んでいない。このことも理解しないで認知症薬を気楽に処方すべきではない。当たり前のことであろう。

認知症専門医がこれが認知症の医療だと言い張っていれば、河野和彦博士のような御仁が出てくる。彼らは同じ穴の狢である。このような荒廃を招いた責任は、ろくに患者を診る時間を持たないのに、効く効くといっている認知症の権威たちにある。嗚呼!

続く


by rr4546 | 2017-03-31 19:54 | 医療関係 | Comments(0)