医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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寄り道  付録:少量投与の保険適応 ADASとSIB 著作権と非公開データ No2

6月1日付けで厚労省保健局医療課は国民健康保険中央会と社会保険診療報酬支払基金に「添付文書で規定された用量未満で認知症治療薬を投与されたケースを一律に査定することのないよう」求める事務連絡を発出した。
簡単に言えば認知症治療薬が発売前の治験で得られた有効用量以下の投与量で治療しても健康保険という公的な支払いをするよう健康保険の基金に国が求めたということである。これが4種類ある認知症治療薬のある薬だけでそのような対応が求められたということであればそういうこともあるかもしれないと聞き流したかもしれない。驚くことに4種類すべての認知症治療薬で、場合によっては少量投与で治療をしても診療報酬を請求してもよいとの通達には、私のようなぼんくらは目を白黒させておろおろするばかりである。
このようなことを求める前に厚労省の中で、少量投与で認知症に対して本当に治療効果があるかどうかについて真面目な議論が行われたのであろうか。圧力団体の要求に、根拠など検討せずに認めたのではないか。少量投与でも効果があることを示す客観的なデータがあるのであろうか。あるにはあるがその論文は、効果の臨床的評価も医師の主観的な判断に任され、検討された症例数はわずかでおよそ臨床的価値がある論文とは言えない。いずれ触れることになるであろう。
認知症治療薬の有効用量については、少量から徐々に投与量を挙げて、アリセプトであれば3から5、10mg、レミニールであれば8から16mgに場合によって24mg、リバスタッチであれば4.5から18mg、メマリーであれば5から20mgに増量することと医師向けの添付文書に明確に記載してある。今はこの添付文書はネット上で誰でもがみることができる。
保険診療上は認知症治療のためにはアリセプト5,10mg、レミニールであれば16,24mgそしてリバスタッチでは18mgそしてメマリーであれば20mg投与しなければ健康保険組合からの診療報酬の支払いが求められなかった。この用量指示に従って診療する以外なかった。それが健康保険を維持するための最低のルールである。
投与を少量から開始するのは特に消化器系の副作用を抑える目的であるので、認知障害を改善させるためには必ず維持量まで増量することと念が押してある。
今まで上記の投与量の設定に深くかかわった認知症の権威たちが、この通達に異議を唱えないこと自体が異様である。彼らは多数の患者をモルモット代わりに使って有効投与量を決定した。そのような重大な責務を果たした以上、今回認められた少量では効果がないとはっきり言うべきである。そうでなければアリセプトが発売されて10年以上、レミニール、リバスタッチ、メマリーが発売されて4年以上経過するが、添付文書通り治療を受けて、副作用で苦しんだ人たちは浮かばれないではないか。認知障害に苦しみながらその上薬の副作用で大変な毎日を送った。そのことについて5年前にすでに私は繰り返し医学論文や医学書で警鐘を鳴らした。
認知症治療薬の副作用について「認知症家族の会の人たち」に、あなた方が声を挙げなければ認知症治療の問題点は解決されないとたびたび連絡したが、なしのつぶてであった。相変わらず製薬会社の言われるままに、認知症患者に初めて接触した素人の苦労話(毎日20人位の認知症患者に接して3,4年たってやっと、認知症とはこういうものかと理解できたわたしはアホか。認知症はなかなか難物である)かや、認知症と診断されれば、どのような事故を起こしても免責されるための手口の勉強会に励んでいる。今回は詳しく論じないがわが国の世界に誇っていい認知症対策があれば、免責してはならない!認知症は厄介であるので早く治療を受けましょうという薬屋のセールス戦略のお先棒を今でも担いでいる。繰り返すが彼らは一体何者か。嗚呼!
そして今回の通達はあらためて、認知症治療薬の効果判定のむつかしさ示したと考えるべきであろう。実際国は少量での保険診療上の支払い請求を認めたが、どの製薬会社も少量投与の有用性のデータは提出しないであろう。添付文書はそのままで厚労省が勝手に方針を変えただけで、今後は根拠のない認知症治療薬の少量投与が行われるという異様なことが続けられるであろう。
認知症治療薬の効果評価のいい加減さをそのままにして、ありもしない認知症医療の充実を叫び続けていること自体尋常ではない光景に私には見える。直観で言えば、認知症治療薬の効果は副作用を効果と判定している気がする。それを知っている権威や製薬会社は少量の認知症治療薬の効果判定は決して実施しないであろう。少量では副作用も出ないけれども効果も見られないことを知っているから。
厚労省の今回の心変わりから私たちは認知症医療について真剣に論じあうべきであろう。彼らが患者のほうを向いているのか、製薬業界のほうを向いているのかわからない。彼らは患者の健康を守る義務がある。私が担当者であれば「認知症治療薬の副作用に通暁して、患者に何らかの不都合が起これば直ちに投与を中止すること。現時点では有効投与量以下で認知症患者の病状に好影響を与えるとの証拠は得られていない。少量投与は保険診療上認められない。診療報酬請求があればカットすること」と通達する。さらに「独断的な理由で少量投与を継続して保険請求してきた場合は、健康保険医を取り消すこと」。こうすることによってのみ世界に誇っていい健康保険皆システムが維持できる。販売する製薬会社すら少量投与の効果を示せないであればそうする以外ないではないか。
コウノメソッドを論ずる前に認知症治療薬の有効性がどのような方法で評価されているかを書いているが、次々わけのわからない面妖な事件が起こるので論考は先に進まない。
続く






Commented by 寮隆吉 at 2016-06-24 00:04 x
いつも貴重な情報有難うございます。先生のパブリックコメントも参考にさせていただいています。ガーガー言うのにはくたびれました。もうリタイア―です。自分の提唱する「BPSDへの対応」で、介護士の力を借りながら、全例家族が喜んでくださる程度に患者が穏やかになりますので、権威たちの作成するガイドライインを参照することはありません。
先生にありましてはますますご活躍されることを祈念いたします。先生のように真面目に実際、認知症患者に接しておられる方が、わが国の認知症医療をリードできる日が来ることを心から待っています。
by rr4546 | 2016-06-17 11:31 | 医療関係 | Comments(1)