医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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寄り道 認知機能評価法:ADASとSIB-著作権と未公開データ

4種類の抗認知症薬(アリセプト、レミニ―ル、リバスタッチ、メマリー)の薬効について書いている。抗認知症薬の少量投与や7年間以上も長い間、認知症の治療薬として広く使われているが、機能性表示食品の指定もうけていない米ぬか(フルガード)が河野博士一人のお墨付きで認知症治療の特効薬として売られるなど、詐欺まがいなことが認知症医療現場で幅を利かせれば、患者に大変な不利益をもたらすのではないかと危惧している。正直な気持ちは一日も早く認知症国際会議のコウノメソッドの論考を仕上げたい。
前述したように4種類の抗認知症薬のいずれも治験の段階で、偽薬投与群と薬投与群の投与後の全般臨床的症状を評価する(本間昭他:老年期痴呆の臨床評価法―変化に関する全体的評価. 老年精神医学雑誌 10:193-229,1999)と、大幅な改善、中程度の改善、若干の改善、症状の変化なし、若干の悪化、中程度の悪化、大幅な悪化の7段階の間で薬投与群と偽薬投与群との間で特別な差が認められなかったことが、実地医家に提供されている製品情報概要に記載されている。
それにも拘らず抗認知症薬ががばがばと使われ、いまでも認知症の権威が抗認知症薬を早期に投与すると軽度の状態が長く維持できるとメディアを使って発信している。本当に彼はよく効いた症例を経験しているのであろうか。薬屋へのリップサービスにしても度が過ぎる。治験の成績でも、著効が長期間続いた症例があるとの記載はない。投与開始時に誤診したに過ぎないであろう。あるいはデイケアなどに通い社会的接触がうまく保てたおかげであろう。
権威たちがいうように臨床的に効果があれば私も積極的に使いたいが、残念ながら患者自身に投薬後、物忘れや、時間や場所についてよく理解できて、日常生活がスムーズに行えるようになったかを問診しても正しい答えが得られない。家人に台所の段取り、買い物、お金の管理、書類の整理そして電話などの対応に改善が見られたかを聞いても、よくなりましたという感謝の言葉を聞くことはない。
それでも副作用がなければ藁をも掴むつもりで投与を続けたいが、不穏、無意味な多弁、易怒性、落ち着きのなさ、夜間の不穏、攻撃性、不必要な徘徊、転倒ときに傾眠そして心不全の増悪などあきらかに見過ごしてはならない重大な副作用と考えるしかない症状に遭遇して投与が続けられない場合が多い。
一般医家はこれらの副作用を認知症に伴って出現するBPSD(周辺症状)や合併していた疾患の増悪と診断して、向精神薬を投与しながら治療を続けるが、抗認知症薬を中止する方が劇的に患者の安定が得られる場合が多い。このことが少量投与の有用性を主張するコウノメソッドを生み出した背景であろう。
アルツハイマー型認知症(AD)の薬物療法ではっきりと効果が実感できないのに、抗認知症薬の効果判定をほとんど行わず、副作用を見落としてなぜこれほどまで使われ続けているのであろうか。
製薬会社が薬効を印象的に示すデータを権威たちの助言に従って提供しているからであろう。多分手玉に取られている実地医家に自覚がないから、問題は一層深刻である。
薬効評価は、軽度から中程度ではAlzheimer‘s disease assessment scaleの頭文字をとったADAS(Mohs RC et.al. Psychopharmacol Bull. 19:448,1983:an instrument for assessing treatment efficacy.、 Homma A et al. Clinical Evaluation 26:251、1998、本間昭他 老年期痴呆の臨床評価法―変化に関する全体的評価とサイコメトリックテスト. 老年精神医学雑誌 10、193、1999)が使われ、中程度から重度ではSevere impairment batteryのやはり頭文字をとったSIB(Panisset M et.al. Arch Neurol 51:41,1994、 Schmitt FA et.al. Alzheimer Dis Assoc Disord 11:(Suppl2):S51,1997、新名理恵他 SIB日本語版および改訂ADCS-ADL日本語版の信頼性・妥当性。臨床的有用性の検討. 老年精神医学雑誌 16:683、2005)が使われ検討されている。これらの評価で得られた、いかにも効果がありそうな図が製薬会社から提供されている。念のために触れておくが、ADASを使って、中程度から重度の患者の薬の効果は評価できないし、逆にSIBを使って軽度から中程度の薬の効果は評価できない。ADという同じ疾患にもかかわらず、進行の程度によって薬効を違った方法で検討しなければ有効性を示すことができない。
今回は中程度から重度の患者の抗認知症薬の投与後の効果が評価できるというSIBについて触れる。著作権とか未公開データという、私には馴染みのないことばかりが出てきて往生しているが、どうやらその詳細を知らないで多くの一般医家たちはガバガバと抗認知症薬の処方を切っているらしい。
ADの中程度の進行ステージといえば機能獲得年齢が7歳以下で洋服を一人で選べない、買い物や料理が一人でできないなどの症状から、重度といえば5歳以下の認知機能で着衣、排尿、排便に介助を要し、さらに症状が進めば言語的コミュニケーションや人物認識にも障害がでる状態をいう。
私は個人的にはこのような進行レベルになったら、患者が周囲のものと少しでも穏やかに生活を送り、家人が患者に振り回されて疲弊しないことに注力するべきと考えているが、認知症の専門医たちはこの段階の患者にも、進行遅延を期待して抗認知症薬の投薬治療を行うべきであると推奨している。
健康保険診療上、アリセプト10mg単独あるいはメマリー20mg単独そしてアリセプトとメマリーの併用が認められて、私の接する患者はすべてこれらのいずれかの治療を受けている。
ただかなりの脳細胞が変性・死滅して認知機能障害を来している患者に軽々に脳の中のアセチルコリンを増加させたり、グルタミンソーダの刺激伝導系を操作すると思わぬ症状を招来することがあることを知っておくべきであろう。
製薬会社が出している製品情報概要を見ると食欲不振、便秘、めまい、頭痛などさほど気にしなくてもいい副作用がはじめに書いてあって、後ろのほうに付けたしのようにう患者を本当に苦しめる痙攣、意識消失、激越、攻撃性、妄想などの精神症状や転倒や心不全などの副作用に触れてあるが、中程度や重度の患者の場合はこのような不都合な精神症状や重篤な合併症を薬物でおこしてはならないので、まず本当に患者を苦しめる副作用に対する注意喚起が必要であろう。
このような副作用があることを権威たちは知りながら中程度や重度のAD患者に薬物療法を勧めているので、その根拠をわたしの理解した範囲で書いておく。
書き終わるつもりであったが枚数が尽きた。この続きは次回。
SIBの著作権についての製薬会社の返事と、SIBの下位項目に対する薬の効果の経時的変化の有意差検定について触れる。驚くことばかりである。認知症に対する摩訶不思議な治療法が提案されるはずである。
とても堅気な世界の出来事とは思われない。手が震えてこれ以上key boardが打てない。嗚呼!




by rr4546 | 2016-05-27 15:22 | 医療関係 | Comments(0)