医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」パブリックコメント

日本老年医学会がホームページで「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」に対するパブリックコメントを求めている。早速コメントした。コメントを公開するかどうかについて逡巡があった。コメントを求めているガイドラインはすべての人が閲覧できるようになっている。わたしは匿名で意見を述べていない。講演内容もすべて公開している。高齢者医療についていろいろ言ってきたものとして、コメントを公開するのが筋であろう。
コメントに蛇足として書いた2項目は、学会のほうに送らなかった。
蛇足1
原田マハ氏はわたしが最近もっとも愛読している作家である。どの作品も読みやすく完成度は高い。テーマも多岐にわたる。医療の原点を思い出させてくれた原田マハ著「奇跡の人」を読みながら、このコメントを書き上げた。多くの医療従事者にヘレンケラーの物語を土台としたこの作品を読まれることをお勧めしたい。
蛇足2
高齢者施設は、医師、看護職、薬剤師、リハビリスタッフ、そして介護職と異なる職種で何らかの疾患を持つ高齢者の医療と介護を外来ではなく入所させて行っている。高齢者医療と介護に必要なビッグデータが集積されている。高齢者疾患は医療だけで対応できない。介護を必要としない高齢患者は稀である。介護の果たす役割を活用することが必須である。介護というと食介助・排泄介助だけだと多くの人は思っている。マスコミの報道から。わたしが言う介助はもっと前向きで工夫に満ちた自立を促す介助のこと。多くのデータを持つ施設の活用が望ましい将来の高齢者医療・介護に大いに貢献すると思う。
介護施設を立ち上げた厚生省事務次官O氏(ネットで検索するとわたしの思い過ごしかもしれない)が医師会(専門学会を含む)や製薬会社から独立した介護施設を作ったスケールの大きな功績を生かさなければならない。O氏は汚職官僚として罪に問われたが。今はやりの国策捜査であろう。「認知症国際会議」と今書き進めている論考でも、介護施設の活用の重要性で締めくくりたい。現在の厚労省の高齢者対策に取り組む官僚が、複雑な政治力学の中で、スケールの大きなvisionで先輩たちが作り上げた高齢者対策を生かさないで、もっともらしい仕組みつくりに汲々として高齢者医療現場を荒廃させているー中核病院からの過剰投与、新薬処方ルートの確立(高齢者は医療だけでは十分でない、高齢者は壮年期と違ってリハビリ・介護の占める割合が異常に高い、専門医は介護の状況を知らない)、在宅医療長者の出現、現場を知らない不勉強な役人の仕事のやった振り(医師会や薬屋への過剰な依存-これを引きはがして現在の高齢者医療や介護の質がかろうじて維持されている)ー。成果を生んでいない対策ばかりができあがっていく現状は不思議でならない。無駄な人材の増員、福祉役人長者の出現。地区認知症地域ケア連絡協議会など開催主体の不明なもっともらしい名称の協議会の暗躍。
仕組みは素晴らしい。ただ先輩の遺志を継いでいない。圧力団体の暗躍に手を貸しているように見える。具体的なことをおいおい書いていく。嗚呼!

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」パブリックコメント

日頃感じていることについてコメントさせていただきます。

まず各論に従って
ストップとスタート
P7 抗血小板薬
対象となる患者群として心房細動患者が挙げられていますが、現在心房細動の塞栓症予防に対して抗血小板薬は無効であるとの結果が出ています。処方する人がいるのでしょうか。
ストップの薬として抗血小板薬を挙げれば十分では?
敢えてアスピリンや複数の抗血栓薬(抗血小板薬?)の併用に対してのコメントは不要では?ストップと推奨して、各論を論ずる意味は?
P13
サイアザイド系降圧利尿薬の少量投与は、降圧効果や心血管系の合併症を下げることが古くから知られており、今でも欧米諸国では降圧剤として広く使われています。日本では他剤の降圧薬と比較して、ほとんど使用されていません。p67にサイアザイド系利尿薬に低Na血症、低K血症、低Mg血症・・・・と副作用が挙げられていますが、これらのことが臨床的に問題となるとの、信頼できる研究報告があるのでしょうか。
わが国の降圧薬としてのサイアザイド系利尿薬の異常に低い使用頻度の理由がよくわかりません。
降圧剤のスタートにサイアザイド系利尿薬を挙げない根拠は?脳出血の多いといわれているわが国では特に。

薬物有害事象の回避(p8~)
指摘されている点は今すぐにでも、有効な方法で実際に改善されなければならないと思います。
多剤の処方を減らすためには、「治療目標の設定と効果判定の厳密化」が最も重要だと思います。細かいことですが優先順位の前に「治療目標の・・・」の修飾語を、そして表3の中に「効果の定期的なチェック」を入れるべきだと思います。表4に薬効の確認がありますが。ともすると薬効はMRの説明とおりと思い込みがちです。
実際の現場では患者の訴えに対して薬が漫然と処方されています。10種類以上というのも稀ではありません。患者側も多くの薬を出してもらうほうががよりよい医療を受けていると思い込んでいます。多剤服用の弊害について国民全体への啓もう活動の必要性も強調するべきだと思います。
さらに細かいことですが表4の有害事象の診断の項の「意識障害、意欲低下、低血圧・・・」とわかりやすい事象ではなくて、転倒や易怒性など薬の副作用と思わない事象ももっと具体的に挙げるべき?

最も心を痛めるのは、新規の経口糖尿病薬による低血糖や脳卒中の発症、あるいは新規の経口抗凝固薬(NOAC)による脳出血の合併症など重篤な有害事象が高齢者にとくに見られたということです。
是非「新薬の高齢者への投与の項」を設けてください。
わが国は超高齢者社会に突入しています。新しい薬は歓迎します。ただ効果の判定に年齢別の効果と副作用についての検討成績があまりないように思います。臨床効果も安定した患者群で出された成績が多い印象。薬剤ごとに対象患者の年齢を見ていませんが。
65歳以上、75歳以上、85歳以上とグループ分けして、新規の薬の薬効を見た成績がない場合は、専門学会が年齢別の効果成績をまとめる。その成績が出た後、効果と副作用を勘案して新薬を高齢者に処方する。そういう思い切ったガイドラインを期待します。その成績がない場合は製薬会社に年齢別の効果と副作用についての一般医家への説明を義務つける。
生命予後から考えて新薬の効果が出るころは、この世にいない患者にじゃぶじゃぶと新薬が投与されています。医療者が何か薬に振り回されている事例がないわけではない。
このようなデータが出るのを待てば救われない患者も出る可能性がある。そういう場合は専門学会が新薬処方を登録制にして、効果と副作用を主治医一人の判断に任せるのではなく、第三者の判断(セカンドオピニオン?)も行ったうえで、新薬の処方を最低300例(統計的の意味のある例数で根拠はない)を積み上げ、適正な処方が確立された後に、一般医家も処方できるようにする。
いずれもコストや労力に見合わない対策ということであれば、新薬は発売後2年間(根拠なし、症例数で縛るべきであろう)は70歳以上(根拠なし)の患者に投与しないのを原則とするくらいの提言が期待されます。
新薬の有害事象の歯止めを出す必要があると思います。
蛇足ですが、今回のガイドラインの冒頭に、高齢者薬物療法の注意点「薬物有害事象の回避」項を持ってくる方が、多くの医師がガイドラインを紐解くように思います。

抗血栓薬(p53)
抗血栓薬は、抗血小板薬、抗凝固薬、線溶溶解療法と作用機序の違った3種類の薬剤があります。抗血栓薬と銘打つのではなく、記述から見ると抗血小板薬についてであり、抗血小板薬とした方が誤解が少ないと思います。
抗血小板薬の脳梗塞の二次予防は欧米各国で認められた薬効です。わが国ではアスピリンの否定的面ばかりが強調されがちですが、少量のアスピリンは脳梗塞の二次予防に勧められると挙げてもいいと思います。アスピリンの抗血栓効果(一次予防に無効)を推奨に上げない理由があるのでしょうか。わが国ではアスピリンの代わりにプラビックスがよく使われています。日本人はプラビックスを有効にする酵素(CYP2C19)の不活化型遺伝子をホモ接合体で持つ人は20%くらいおり、20%くらいは全く無効であることに気が付かずに服用しています。そのことも明記するべきです。

介護施設の医療(p130)

「患者にとって転院は環境の変化を伴うため、転院直後の薬剤変更を行わない」(p131)
との記載は実態を反映していないと思います。
糖尿病、高血圧、心不全、CKDの患者は入所直後よりカロリー制限、食塩制限、水分出納管理を行います。入所後数日で、経口糖尿病薬の減量あるいは降圧薬の中止をしなければならない患者は多い。降圧薬も60%以上で中止減量ができたとの成績を持っています。
「患者の了解なしに薬剤の変更は行わない」としないと、低血糖や過剰の降圧で転倒などの薬害事象は防げないと思います。入所者を不安に落とす人はいるのでしょうか。苦労するだけです。介護施設は監獄ではありません。


by rr4546 | 2015-04-17 15:17 | 医療関係 | Comments(0)