医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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平成23年度忘年会挨拶―医療と介護

 もう忘年会を迎えることになりました。わたしのような年になると一年の経つのが早くて、この一年何をしていたのかと年の暮は後悔ばかりをしています。若いあなたがたは仕事の上でも、私事でも大切な経験をし、思い出深い一年であったでしょう。いずれにせよ皆で無事この一年間を過ごせたことを喜び合いたいと思います。本当にご苦労さまでした。
 わたしたちが日々、悩みながら取り組んで、それなりの成果を上げている介護という仕事について、いつも感じていることをお話ししておきたいと思います。ご存じのように日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入しています。現在5人に1人が65歳以上で、君たちが高齢者になる40年先は2.5人に1人が、65歳以上、4人に1人が75歳以上と周りを見渡せば年寄りだらけという、想像するだけでも寂しい社会になります。
 あなたがたは年をとることがどういうことか実感できないほど、エネルギーに溢れていますが、年をとれば、頭の働きが鈍くなり、肉体の活力も失われます。これは避けることのできない老化という生理的現象がもたらすものです。100歳になっても現役で活躍されている、化け物に近い人でも、よく観察するとかなりボケた振舞いが多い。きっと周りの人は100歳の人をサポートするために大変苦労されているでしょう。高齢になれば認知症、脳卒中後遺症、癌、腎不全、骨折、高血圧、糖尿病などの病気を抱え、多くの人の助けを頂いてやっと生きているということをわたしたちは仕事場で学びました。高齢になっても人の世話にならないで生きているつもりの人もいますが、わたしの実感では高齢者は人のお世話になりながら、人に迷惑をかけながら生きている人たちだと言っていいと思います。若いあなたがたも一人で生きているのではなくいろいろな人に世話になって、迷惑をかけて生きているのですが。
 老化という宿命に逆らって、最後まで健康な生を楽しもうと、医療の充実に励む人や医療を頼りにする人もいます。ただわたしたちの働いている仕事場での経験から言うと、人間には医療では決して克服できない老化から来る疾患があるということを知っています。次の手もないのに検査の検査をして診断をつけたり、過剰な薬の投薬による副作用で本来の病気以上の苦しみを与えたりと高齢者を医療の対象、人を物でも扱うようにすることが本当に望ましいか、たびたび考えさせられますね。わたしの今の願いは高齢になったら、医療ー副作用もわかっていない最新の医療ではない医療ーを信頼しつつ、心のこもった介護の力を借りて自分らしい晩年を送ることです。副作用が予測できない新薬は、効果や副作用がはっきりするまで高齢者には使わないくらいの倫理的対応を、国や学会に求めていいですね。何せ高齢者は弱者なのですから。
 検査ばかりを受けたり、薬をお腹がいっぱいになるほど飲んだりする生活を送るのがいいのか、人並みにできなくなった能力を介護で補って、穏やかな老年を送るのがいいのか。わたしたちは仕事場からそのどちらがいいのかをはっきりと知っているように思います。出来ないと思った能力を介護しているうちに、お年寄りたちが知らぬ間に出来るようになっていくことがある。その成果は時に医療の成果を超えている。高齢社会を迎えるわたしたちは、介護という最も人間らしいスキルを持って、穏やかな高齢社会を作る先頭に立って頑張らなければならないと心から思います。
 高齢社会の主役は医療ではなくて、介護である。新薬の抗トロンビン薬で出血死したり、インクレチンとSU薬の併用で転倒したり低血糖発作で死んだり、手術はうまくいったが寝たきりになる。そういう医療至上主義の悲劇を繰り返すのではなく、ハンディキャップを持った人の能力を補い、その人らしい生を全うする介護の充実した社会を作り出す。望ましい高齢社会を担うのは自分たちであるという誇りを持って、来年も一層介護、リハビリ、医療、看護の各分野のブランドを磨いて、一人でも多くの人に信頼され、自分でもやりがいの感じられる歩みをしましょう。わたしたちには、日本が世界に先駆けて突入する高齢社会で重要な役割を果たすことが期待されているのです。
 少し理屈っぽい話になりましたが、今から美味しいごちそうと仲間の余興を楽しみましょう。本当に一年ご苦労さまでした。

by rr4546 | 2011-12-19 12:50 | 医療関係 | Comments(0)