医療に関する意見、日本人のあり方に関する意見


by rr4546
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よき高齢社会のために   No.11  重度の認知症への対応 No.1

 アルツハイマー型認知症は以前にも述べたように大抵は短期記憶障害で始まり、2、3歳の知能指数しかない幼児と同じように着衣、入浴、トイレなどにも介助が必要となる段階へと悪化していく。このような進行性の臨床症状を私たちは便宜的に軽度認知障害(MCI)、軽度、中等度そして重度あるいは高度認知症とステージングして患者を観察する。
 老健には主に重度の段階と呼ばれる、日常生活にも介助が必要となった高齢者が多くおられる。語彙が少なくなり、言語的コミュニケーションが十分できないが、かといって感情のない植物人間の集まりではない。患者さんには個性があり、人懐っこい人、怒りっぽい人、余り喜怒哀楽を表わさない人、スキンシップを好まれる人、肌を触れれば目をむく人など様々で、私は一人一人とのコミュニケーションを楽しんでいる。私を御主人と間違えていた人が突然「先生」と呼びかけてきたりして、毎日驚きの発見で日々新たな事を学んで新鮮である。病を背負っておられるが極めて人間的な人たちばかりである。
 テレビなどで老健施設の風景を見ると、車椅子に乗ったボケ爺さんボケ婆さんばかりで異様な所のような印象を持つが、実際体験すると私には立派な人たちとの会合の場の方が本当かいなと驚くことばかりで、老健施設はごく当り前な人間のコミュニティーだと感じる。実際彼らが感情豊かであることを色々な場面で見ることができる。例えば介護士の個性によって、患者さんたちの反応も全く違っている。朝のラジオ体操も皆がニコニコしながらしている日と、つまらなさそうにしている日があり、成程なと学ぶことは多い。
 知人達が訪ねたりしてくると、必ず施設の中を案内するが皆それぞれが自由に振舞っているので「ボケてもまんざらではない」などと妙なことを安心されるのでこちらが吃驚する。
 現在根治療法のない、重度のアルツハイマー型認知症に対して私たちのできることに何があるのであろうか。
1.介護を受けないで少しでも日常生活が送れるよう工夫すること。
2.穏やかに日常生活が送れるような環境を作ること。
3.重度の認知症の患者は記憶障害、失認、失行などの必ず出現する中核症状に加えて、攻撃性、妄想、徘徊、不潔行為、昼夜逆転などの行動・精神症状(周辺症状)が出現してくる。患者自身だけではなく家族の方も苦しまれる。その症状を取ること。
 などがあるであろう。治してあげたいが現在治す方法がない以上やってあげられることは限られている。
 介護の対象になる典型的なケースと言っていいであろう。しかし現在重度の認知症に対しては私から見れば、患者の尊厳を傷つけているのではないかという医療がかなり広く行われている。実際の医療の現場の紹介とその問題点を指摘して重度の認知症と私たちはどう付き合っていくべきかを考えておきたい。私の愛する認知症の患者が患者を診ないで製薬会社の方ばかりを見ているとしか思われない医師に弄ばれてはならないと感じるからである。また重度の認知症患者と私たちがどのようなヨミュニティーを作っていくべきかを考えることは、よき高齢者社会を作るヒントに溢れていると思う。

続く

by rr4546 | 2009-04-16 12:04 | 医療関係 | Comments(0)